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記事2012年12月13日 2258号 (1面) 
平成25年度医学部定員9,041人に
地域の医師不足解消などに6年連続増員
災害医療担う人材など育成
複数の大学が連携して研究医養成

 深刻な医師不足が続く中で、文部科学省は地域での医療従事を条件とした奨学金や選抜枠等を設ける大学等について六年続けて医学部の定員増を認めている。災害医療の分野でも専門的な知識等を持つ医師の養成は急務。それだけに私立医科大学には社会から大きな期待が寄せられている。
 文部科学省は十二月七日、平成二十五年度大学医学部入学定員の増員計画を公表した。それによると、来年度の医学部定員総数(計画)は前年度に比べ五十人(十七大学で)増員され、計九千四十一人となる。医学部定員の増員は、地域の医師確保、研究医養成等の観点から実施されているもので、文部科学大臣の諮問機関である大学設置・学校法人審議会の審議を経て近く正式決定する。
 国公私立大学の医学部定員の増加は、近年の医師不足等に対応するため、平成二十年度から毎年実施されているもので、増員開始前年度(平成十九年度)と平成二十五年度を比較すると、千四百十六人もの増員が行われることになる。
 医学部の入学定員は百人から百二十人程度なので、千四百十六人もの増員は、六年間に医科大学が十数校増えた計算になる。増員期間は平成三十一年度まで。それ以降については、その時点での医師養成数の将来見通しや定着状況等を勘案して決定される予定。
 平成二十五年度の五十人の増員の内、三十九人は、「地域枠」として増員されるもの。医師不足に悩む地域での医療従事を条件とした奨学金や選抜枠を行う大学十二校で入学定員の増員を図る。国立大学は、東北大学など八大学で二十七人増員する。このうち十人増員する東北大学では昨年度に引き続き一年次の地域医療関連科目の中で「地域医療動機付け教育」を強化し、学生の意識の向上を図るほか、東日本大震災を教訓に、一年次で災害医療に関する基礎知識修得を図るとともに、各種の医療実習の中に被災病院での実習を加える。
 公立大学は、福島県立医科大学で五人を増員する。災害医療総合学習センターで放射線の特性を正しく理解し、放射線災害に的確に対応できる人材の育成等を行う。
 私立大学は、岩手医科大学、獨協医科大学、北里大学の三校が計七人を増員する。岩手大学では来年三月完成の「災害時地域医療支援教育センター」で研修医や学生に対して被災地を含めた災害医療を担う人材育成を実施する。獨協医科大学ではプライマリヘルスケアを学ぶ「地域包括医療実習」を行うほか、地域医療の第一線機関である保健所等で「地域保健実習」を行う。北里大学は、各種実習で地域医療実習を行うなどとしている。
 また、五十人の増員の内、九人(五大学)が「研究医枠」で、複数の大学の連携により研究医養成の拠点を形成する大学の入学定員の増員を行うもの。平成二十五年度では、国立大学が東京医科歯科大学と千葉大学の二校、計三人、私立大学は埼玉医科大学、順天堂大学、関西医科大学の三校、計六人。
 このうち埼玉医科大学では慶應義塾大学、女子栄養大学と連携し、四年次から進学する「基礎医学研究者養成コース」(仮称)を設置するほか、コース修了者には最長三年間、特任助教相当ポストとして同大学医学科基礎系分野で雇用されることを可能とする。
 順天堂大学では基礎医学研究者養成プランにおいて新潟大学と連携し、三年次以降の学生に対し、若手教員等の指導の下で継続して基礎研究ができるコースを設ける。
 関西医科大学では一年次の段階から研究医を志向する学生十〜二十人程度を対象に、六年一貫新カリキュラムを行うほか、授業時間外等に研究に参加させる「研究医養成プログラム」を実施する。
 三つ目が、「歯学部振替枠」で歯学部入学定員を減員する大学については医学部入学定員の増員を認めるもの。該当校は岩手医科大学一校で、歯学部定員を二人減員、その分医学部の定員を増やす。
  ◇
 文部科学省と厚生労働省は九月十日に「地域の医師確保対策2012」を策定しており、その中では中長期的な医師養成数については地域枠卒業者の動向把握や都道府県等における医師数の分布などの検証を行い、具体的なニーズに即した医師養成等を行う計画。同時に医師確保のための環境整備として、地域医療への貢献と医師としてのキャリア形成を両立できる仕組みの構築、地域間、診療科間偏在の解消につながる誘導策や制度の検討、女性医師等の生涯を通じたキャリア形成支援、チーム医療の推進等による勤務医等の負担軽減、超高齢社会に対応した医療を担う人材の養成、グローバルに活躍できる医師の養成を行う。また、東日本大震災の被災地での医療従事者の確保にも取り組んでいく方針だ。


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