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記事2012年1月13日 2226号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
初等中等教育分科会高等学校教育部会
学力的に優れた才能の伸長策討議
飛び入学制度には賛否両論

中央教育審議会初等中等教育分科会高等学校教育部会の第三回会合が昨年十二月二十七日、文部科学省内で開かれた。
 この日は同部会の検討課題例の中から、学力的に優れた生徒の才能や個性をどのように伸ばすかをテーマに、同部会委員が校長を務める京都市立堀川高校、灘中学高校の実践と、千葉大学で実施されている早修制度(いわゆる飛び入学制度)について聞き取り、意見交換が行われた。
 このうち学力的に優れた才能等を持つ生徒の教育に関しては、初めに、同部会の荒瀬克己委員(京都市立堀川高校)が同校でのSSHの取り組みを、和田孫博委員(灘中学高校)が固定された教師集団が六年間持ち上がりで指導する教育などを説明、また科学オリンピックへの対応、グローバル人材への対応等を説明した。その後、委員間で意見交換が行われたが、「高校も大学も従来のような一流を目指す方向で日本はやっていけるのか、一度考えるべきだ」、「普通の学校にも個性的な生徒がいる。それをどう伸ばしていくのか」、「じっくり学ぶことの大切さを感じた。参加型、プロジェクト型の教育を高校でも模索が必要だが、広がりはまだまだ。大学との連携が鍵」、「優れた才能を持っていても大学受験で躓(つまず)いたら才能を伸ばせない。高大連携が重要だ」「大学入試制度は現行でもよいが、基礎的な学力があれば入れてくれる大学があるといい。本気のAO入試を行ってほしい」といった意見が出された。
 一方、早修制度に関しては、同部会の上野委員が千葉大学での飛び入学制度を説明したが、委員からは「保護者としては、高校二年生からの飛び級には疑問が残る。高校は三年間で社会の中で生きていく力を付けるところ」「飛び入学制度が大学の学生募集のために無制限に実施されたら心配」「米国では、高校に在籍しながら、大学に通っている。あまりはっきり分けない方がいい」、「高校と大学の接続に関しては、高校の進路指導が問題で、高校生の勉強時間の少なさが一番の問題だ」との意見が聞かれた。


生涯学習分科会


高校中退者等への学習支援策協議 -


早い段階での対策求める声




 
 中央教育審議会生涯学習分科会は十二月十九日、文部科学省内で会議を開き、高校中退者など学習支援が必要な若者のために社会教育が果たすべき役割などについて意見交換を行った。
 
初めに、宮本みち子委員(放送大学教養学部教授)が、問題提起を行った。宮本委員は「高学歴社会における低学歴問題」として、学校に適応できず、十五〜十
七歳で社会に出ても挫折して失敗体験を重ねることが多く、教育・訓練の機会にも恵まれずキャリアを形成することもできない若者がいることを指摘した。
 背景には、家庭の貧困、親の離婚や家庭崩壊、いじめ、DV、精神疾患などがあり、現代社会の抱える矛盾が、ある層の家庭に集中しているという。宮本委員は、自立に必要な援助を親から得ることができないまま社会に放り出され、親に代わる社会的支援も手薄だと述べた。
 高校中退理由としては「勉強が分からなかった」「欠席や欠時がたまって進級できそうになかった」との回答が多く、中退後、仕事に就くための資格を取りたくても「基礎学力に自信がない」からできないと思うとの回答が多い。
 宮本委員は、支援のポイントとして、地域と学校の連携、学校段階での把握、教育・福祉・精神保健・就労の四つをセットにした支援などを挙げ、学校と家庭と労働の間を媒介する社会が必要であり、ここに社会教育が果たす役割がある、と提言した。
 
そのほか委員からは「一度学校を出てしまうと相談窓口がない。予防措置のための教育が重要」「高校に入っても付いていけない子は小四くらいでつまずいてい
る」「就学前教育へのリソースの投入が必要」など、早い段階での対策を求めるとする意見が出たほか、「格差は社会的構造的な問題。同時に地域間格差も出て
いる」「情報共有ができていない。ネットワーク作りが必要」などの意見が挙がった。


大学分科会大学教育部会

シラバスの充実方策など討議
「チームで教育の強調を」との声も

 中央教育審議会・大学分科会の大学教育部会は十二月九日、文部科学省内で会議を開き、国際的な動向を踏まえた大学教育の展開を主なテーマに審議した。
 学生の学習密度を高めるための一つの方策として、シラバスの充実が取り上げられた。シラバスについては、学士課程答申が、コース・カタログと同等のものにとどまることのないよう指摘している。しかし、委員からは「実際に活用されているかは確認が難しい。実際はカタログのようなものになっているのではないか」「日本でシラバスと呼ばれるものは実際にはコース・カタログ」「本来シラバスとは、これに沿って毎日の授業を行うものだが、作ることが目的化している」などの指摘があった。
 改善策については「シラバスは教員と学生のコントラクト(契約)という考え方をどう根付かせるかだ」「認証評価の一巡目ではコース・カタログのようなものが多かったが、次のステップに進みつつある。良いモデルを示していく必要がある」などの意見が出た。
 また「教員が作ったままがシラバスとして載り、横の調整がない。シラバスを教員相互にチェックし、組織やチームで教えるという面を強調すべき」「教員に、授業は自分のもの、という意識が強い半面、システマチックに学生に学習させる点は弱い」「シラバスのすりあわせをして重なり合う部分を認識すれば、科目も減らせるのではないか」など、教員間の調整、科目数の制限、学位プログラムに基づいた科目設定などが課題として挙げられた。

小初中分科会学校段階間の連携・接続等に関する作業部会
中一貫教育についてヒアリング
四・三・二制の導入例も

 中央教育審議会初等中等教育分科会の「学校段階間の連携・接続等に関する作業部会」は十二月二十六日、文部科学省内で会議を開き、教育課程の区切りとしての学年区分の在り方などについて審議した。
 小中一貫教育に取り組んでいる千葉県船橋市と東京都品川区から報告が行われた。
 船橋市では、文科省から研究開発学校として指定を受けた若松小・中学校で四・三・二制を導入。「十歳の壁」と言われる小四までと、小学校五・六年と中学校一年、高校受験を意識し始める中二・中三の三段階に分けている。小学五・六年と中学一年をひとかたまりとして、小学五年から一部科目に教科担任制を導入することで、学級担任制から教科担任制への緩やかな移行を実現している。
 品川区では、区内の全小・中学校に四・三・二制を取り入れており、不登校児童・生徒の発生が抑制されるなどの効果を挙げているという。
 委員からは「小・中の先生が互いの教育内容を知らない現状がある」「学習の抽象化や子どもたちのグループ化など十歳は大きなポイント」などの意見や、小中一貫教育は、今の小中学校では、義務教育のカリキュラムが達成できていないことに対する模索の一つであるとして「小・中の関係者がもっとミックスされて研究開発をする余地がある」との意見もあった。
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