来年度政府予算案の内、私立学校関係施設設備費の多くが近年にない伸びを見せた。増額は、東日本大震災を受けて全国規模で学校施設の耐震改修が急務のためだ。来年度予算では施設の耐震改修に加え非構造部材の耐震対策、備蓄倉庫、自家発電設備の整備といった防災機能強化も図る。

　平成二十四年度政府予算案における私立学校施設設備関係補助金では、「私立大学等の教育研究装置・施設の整備に対する補助」が、前年度比十九億六千九百万円増の約八十五億五千四百万円。伸び率にして二九・九％のプラス。この五年間では公共事業削減等の余波を受け同補助金は四年間は減額していただけに約三〇％もの伸びは画期的。ただし平成二十年度には同予算額が約百六億円あったことを考えると私学関係者も手放しでは喜べない。二十億円近い増額分は、私立大学戦略的研究基盤形成支援事業や教育研究装置等整備費補助、エコキャンパス推進事業等の減額分と合わせて、「学校施設耐震改修事業」（予算額三十五億三千万円）、新規の「防災機能強化事業」（四億三千八百万円）と「専修学校防災機能強化緊急特別推進事業」（二億五百万円）に振り向けられている。
　また「私立高等学校等の施設整備費に対する補助」は、前年度比三十一億九千七百万円増の四十八億八千五百万円となった。前年度予算額に比べ三倍弱の規模となった。
　同補助は、「高機能化整備費補助」、「防災機能強化施設整備費補助」、「エコキャンパス推進事業」の三つからなっているが、情報教室や校内ＬＡＮの整備、校舎等のバリアフリー化等を目的とした「高機能化」の予算額は前年度比七百万円減の七千三百万円、太陽光発電や校舎のエコ改修等を目的とした「エコキャンパス推進事業」も前年度比四百万円減の三千八百万円となった。その一方で、耐震診断を含む施設の耐震補強や安全機能強化、防災機能強化を目的とした「防災機能強化施設整備費補助」は前年度比三十二億八百万円増えて四十七億七千四百万円となった。補助率は三分の一。ただし防災機能強化施設整備費補助では、Ｉｓ値が〇・三未満の施設の耐震化は二分の一。
　私立大学の基盤的研究設備や大学、短大、高専、専門学校の教育基盤設備整備を目的とした「私立大学等の研究設備等の整備費に対する補助」は三十億五千八百万円で、前年度比六億三千八百万円、一七・三％の減額。
　平成二十年度から二十四年度までの五年間のうち四年間は二ケタの減額で二十年度の五十二億六千九百万円から半減に迫る状況だ。
　私立高校等の特色を生かしつつ、各教科等へのＩＴ活用を目的とした「私立高等学校等ＩＴ教育設備整備推進事業」は、前年度比八・一％、五千五百万円増の七億三千四百万円となった。同補助金の増額は七年ぶり。事業内容等に変更はない。
　私学事業団の融資を受けて実施される私立学校の老朽校舎及び危険建物、私立大学病院の建て替え整備事業に利子助成を行う「私立学校施設高度化推進事業」は前年度比七十万五千円減の約二十億九千七百万円の予算規模。利子助成期間は十年間、利子助成率は、平成二十一年度以降の事業に関しては、大学等が貸付利率マイナス〇・五％、高校等が貸付利率マイナス一・〇％の利率。私立大学病院は別途定めている。平成九年度から二十年度までの事業は、大学等が貸付利率マイナス一・〇％、高校等が貸付利率マイナス一・五％の利率。平成八年度以前は貸付利率マイナス四％の利率。
　そのほか日本私立学校振興・共済事業団の貸付事業も学校法人の資金需要を勘案して貸付計画を前年度比百六十八億円増の九百三十八億円としている。