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記事2011年8月3日 2212号 (1面) 
中教審の審議動向
中教審初中分科会 中高一貫教育制度を議論
公立校での学力検査実施の是非 更に検討求める声
 中央教育審議会初等中等教育分科会(分科会長=小川正人・放送大学教養学部教授)は、七月二十五日、文部科学省内で会合を開き、同分科会の作業部会が先にまとめた『中高一貫教育制度に関する主な意見等の整理』の概要について報告を受け、審議を行った。焦点は公立中高一貫教育校に学力検査実施を認めるかどうか。委員からはさらなる検討等を求める意見が相次ぎ、同分科会として方向性を打ち出すまでには至らなかったが、同省では、『主な意見等の整理』に関して八月十五日まで国民から意見を募集し、それらの意見も踏まえ今後の方針を決定する意向。

 この日の初中分科会は通常より三十分長い二時間半の予定だったが、議題が九つあったため、『中高一貫教育制度に関する主な意見等の整理』の説明は簡潔に行われた。しかし、九人の委員から次々と意見が出された。
 そのうち、安彦忠彦委員(早稲田大学特任教授)は、「国会での附帯決議(受験エリート校化しない等)があったが、そのことに十分注意してほしい。受験学力を本来の学力と思っている一般の人の認識が心配」と、田村哲夫委員(渋谷教育学園理事長)は、「中高一貫教育はかなり推奨できるいい仕組み。それに乗れない子どもをどうするのか。公立で全国的にやるとなったら、時間をかけて選抜を工夫してほしい。国私立は数十年、時間をかけてきた。同じようにやるという考えは捨ててほしい」と、井上孝美委員(財団法人放送大学教育振興会会長兼理事長)は、「(中高一貫教育校制度を創設したのは)生徒の個性・能力に応じて(学校制度を)複線化しようという意図があった。受験競争を激化させるとまずい」と述べた。また輿水かおり委員(前東京都港区立青南小学校長)は、「(全国展開を前に公立中高一貫教育校が)どういうことを目指しているのか小学校に下りてきていない。どういうことを考え、どういうシラバスなのか、小学校に強力にアピールしてほしい」と、貝ノ瀬滋委員(三鷹市教育委員会教育長)は、「(公立中高一貫教育校では)実際、どこの大学に何人合格させたと保護者会で説明しており、そうしたことを教育委員会から指導されていると聞いている。中高一貫教育制度については原点に戻ってもう少し考えるべきだ」などと語った。
 その一方で、橋本都・青森県教育委員会教育長は、「普通の中学校の教育にも参考になっている。公立中高一貫教育校を育てていきたい」と語っている。
 『主な意見等の整理』をまとめた作業部会でも公立中高一貫教育校での学力検査の実施解禁が大きな焦点となり、中高一貫教育制度の制度設計を行った平成九年の中教審答申でも受験競争の激化を招かないよう学力検査は行わないとし、同省の省令でもそう定めているが、実際は適性検査と称する学力検査が八割を超える公立中高一貫教育校で実施され、有名大学への進学実績の高い公立中高一貫校入学を目的とした学習塾のコース等も開設されている。
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