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記事2011年7月13日 2210号 (2面) 
低炭素社会実現に取り組む私学 I
文化学園大学
高層ビルに自然換気窓 大学と学院等が交代で休校
 新宿副都心の甲州街道沿いに新都心キャンパスを持つ文化学園大学(大沼淳理事長・学長)では、CO2削減と電力使用量削減でさまざまな取り組みを行った。この取り組みの主な対象になったのは、平成十年に建てられた地下二階、地上二十階、延べ面積五万七千平方メートルのABC館である。
 もともと文化学園の文化学園大学(以下大学という)と文化服装学院(以下学院という)と文化ファッション大学院大学(以下大学院大学という)は実習が多く、アイロンやミシンの使用が多い。学生が一斉にアイロンを使えば教室内の温度と湿度が急激に上がる。このため空調と換気は重要だ。さらにABC館は建設当初から、延べ床面積の増加に伴う光熱水費の増加が懸念された。そこで、採用したのが換気窓である。高層ビルの窓は通常、はめ殺しだ。しかしABC館は、全教室のすべての窓の上部が排煙窓として開き、下部にも換気窓を設けてある。ただし落下防止のために換気窓には金属製の格子を付けた。これによって自然換気ができ、冷暖房の稼働時間を大幅に減らすことができた。
 空調の熱源は、普通、安全率を見込んで設計されているため、ABC館は竣工当初から全負荷運転はしていない。
 平成二十一年までの省エネ対策としては、換気窓を利用して中間期の自然エネルギーを活用し、照明器具は高効率機器を採用、エレベーターはスキップ運転を行い、トイレ節水装置を導入、廊下やエレベーターホールのハロゲンランプを消灯、熱源機器のインバーターと台数制御の導入、窓サッシへの高性能熱線反射ガラスの採用、共用部照明の集中監視および人感センサー導入、室内温度の上下限監視とカリキュラム運転制御、恒温恒湿空調機器熱源の冬季自然エネルギーの利用、職員・学生への協力要請による節約―を行ってきた。
 しかし、平成二十二年度からは東京都が課す温室効果ガス削減率八%(「都民の健康と安全を確保する条例」)を達成しなくてはならず、さらに見直し、ABC館では@給排気ファンのCO2センサー制御の導入、A非常階段照明機器の人感センサースイッチの導入を行い、F館ではB高効率の照明機器への変更工事を行った。最も効果が高かったのは、@給排気ファンのCO2センサーによる制御だった。ビル管理法では室内のCO2は一〇〇〇ppm以下という規制があるため、通常は常に給排気システムが運転される。それを八〇〇ppmを超えたら稼働するようにセンサーを設定し、一〇〇〇ppm以下を維持している。このシステムをABC館に二百台導入した。この結果、排気ファンの運転時間が少なくなり、熱効率の向上で電力使用量が大きく減少した。これで全体目標値の八%の半分程度を達成できた。学園管理本部施設部の友利光夫部長は、東京都からの八%削減要請に、これ以上は難しいと悩んだが、都の職員の「今のビルは無駄だらけ」という発想に、考え方が変わったと話す。
 廊下の照度については、人感センサーによって合理的に照度の確保に努めている。
 平成二十三年度の今、東日本大震災の影響で、夏のピーク電力に対して一五%削減が求められている。同大学では、さらに六月から電球の間引きをスタートし、蛍光灯四百本を間引きした。利用時間帯の長い場所の照明器具は、LEDに替えた。清掃員や警備員等の管理担当者には、「学生がいなければ照明も空調も消していい」と消し忘れ等の対策を行っている。
 また、教職員も協力的だ。
 六月二十七日から九月末までは、学園内の大学(A館)と学院(B館)を交代で休校にし、大学院大学(T館)も休校を設けている。これによって、新都心キャンパスのピーク電力も大幅に削減することができる。交代で休校にするのは、空調温度設定二十八度では、実習室でアイロン等を使えば室内の湿度・温度が急上昇して教育環境が悪化してしまうためだ。安全を確保するには冷房を強めなくてはならず、それでは一五%の削減は難しいため、交代で休校にした。
 授業時数の不足は、レポート提出や成果物の提出等で補うなど対策に苦慮している。八月の夏期休暇中は、職員もお盆の期間を中心に十日間ぐらいは一斉に休み、全館ロックアウトする。
 教育の特徴としては、文化学園の服飾博物館で、七月五日から企画展「暑さと衣服」を開催し、世界中の民族衣装から夏を涼しく過ごすための知恵を展示する。同時に文化学園大学で研究している新素材も展示する予定だ。


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