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記事2011年7月13日 2210号 (1面) 
放射線低減事業など総額2兆円
第2次補正予算案を閣議決定
毎時1マイクロシーベルト以上の公私立校に財政支援
中長期対応へ基金創設
 政府は七月五日、総額一兆九千九百八十八億円に上る平成二十三年度第二次補正予算案を閣議決定した。原子力損害賠償法等関係経費や二重債務問題対策関係経費など被災者支援関係経費、東日本大震災復旧・復興予備費、地方交付税交付金を柱とする予算案で、この中には「福島県外も含めた校庭等の放射線低減事業」四十五億円などが含まれている。

 平成二十三年度第二次補正予算案のうち文部科学省関係事業は、原子力被災者・子ども健康基金事業分を含めて一千四百九十三億円の規模。
 文部科学省の事業は、@原子力損害賠償法関係A福島県及び全国における環境モニタリングの強化B福島県外も含めた校庭等の放射線低減事業が大きな柱で、この中のBに関しては、毎時一マイクロシーベルト以上の放射線量の公私立学校約四百校に対して、災害復旧事業の枠組みで国が学校の設置者(教育委員会、学校法人)に財政支援を行うもの。
 具体的には校庭の表土を削り取るなどの事業で、対象となる学校種は幼稚園から高校等。災害復旧事業の枠組みのため、私立学校に関しては原則二分の一補助だが、経常費補助などを使い別途追加財政支援も行われる。
 また、Aの中には、「ふくしまの子どもたちを守る取り組みに関する緊急要望」(福島県)等関連事業」百十億円が含まれている。この事業は、リアルタイム放射線監視システムの構築(十七億円)、可搬型モニタリングポスト等の設置(五十億円)、個人用積算線量計〈フイルムバッジ等〉貸与事業(四十三億円程度)からなるもの。
 リアルタイム放射線監視システムの構築は、県内の小学校や高校、保育園、公園等に設置型の線量計測システムを整備し、インターネット網を使い、リアルタイムで国や自治体、関係機関にデータが転送、集積されるようにする。すでに国会で成立した第一次補正予算と合わせて県内に二千七百か所の設置を行う。
 県内の放射線量の把握を網羅的に実施するため、地域によっては私立学校も一部対象となるが、殆どは公立学校となる見通し、設置校、設置場所は文部科学省と福島県とで調整して決まる。
 このほか文部科学省予算ではないが、省庁横断的な原子力被災者・子どもの健康への対応として、「福島県原子力被災者・子ども健康基金(仮称)の創設」として九百六十二億円が計上されている。これは原子力災害から子どもを始め住民の健康を確保するため、必要な事業を中長期的に実施するための基金を福島県に創設するもの。
 具体的には、児童生徒を含む全県民基本調査・長期健康調査の実施や、子どもを対象にした中長期的ながん検診の実施、ホールボディカウンターの整備、子どもの心身の健康確保事業(リフレッシュキャンプ)などの「健康管理・調査事業」七百八十二億円(経済産業省所管)、校庭・園庭等の表土改善、校舎等の空調設備等導入、通学路の除染を行う町内会など地域団体支援などの「特別緊急除染事業」百八十億円(内閣府所管)。
 このほか平成二十三年度第二次補正予算案で大きな予算額を占めるものは、東日本大震災復旧・復興予備費(八千億円)と地方交付税交付金(五千四百五十五億円)で、前者は、東日本大震災に係る復旧・復興関係経費であって、予見しがたい予算の不足に緊急に充当するもの、後者は、被災自治体等の特別な財政需要に対応し、その中で東日本大震災復旧・復興予備費使用に係る地方負担、被災者生活再建支援制度の地方負担に係る積み増し分等にも適切に対応できるようにしたもの。

 政府は東日本大震災の本格的な復興予算となる第三次補正予算案も編成する方針で検討作業に入っているが、菅総理大臣の下で編成されるのか、総理が退陣後に編成されるのかは先行き不透明。


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