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記事2011年3月3日 2197号 (1面) 
特定分野の資質能力公証する資格創設への期待薄
文部科学省 教員の資質向上方策見直し等で調査結果
教員の資質能力向上には研修が重要
 文部科学省はこのほど「教員の資質向上方策の見直し及び教員免許更新制の効果検証に係る調査」の集計結果を公表した。調査は学校長や教員、教育委員会、教職課程を持つ大学等が対象だが、「特定分野の資質能力を公証する資格創設」については、教員、学校長、教育委員会、大学の六割前後が「有益ではない」と回答した。中央教育審議会特別部会は学校経営や生徒指導など専門免許状創設の検討を進めているが、それを含め現場関係者の制度改革への期待は低調のようだ。

 この調査は同省が株式会社三菱総合研究所に委託し、昨年の四月から八月にかけて、国公私立の幼稚園、小学校、中学校、高校、特別支援学校一万百二十六校の校長一万百二十六人、教員二万二百五十二人、保護者一万百二十六人、教育委員会千八百四十機関、教職課程を有する大学八百六十四校、学生三千三人を対象に実施したもの。回収率にはばらつきがあるが、概ね六、七〇%台。回答を寄せた教員の二八%は免許更新講習受講者。
 調査結果によると、「一定の専門性を公的に証明する資格の創設」が有益と回答した教員、学校長、教育委員会、大学では、有益な分野として「特別支援教育」を挙げる意見が最も多く、次いで「生徒・進路指導」、「教科指導」の順で、「学校経営」を挙げる意見は教員、学校長、教育委員会とも二〇%台で最も低かった。
 教職課程を修士まで引き上げることが有益かどうかの調査項目はないが、修士まで引き上げた場合に期待できる効果としては「教科や生徒指導などの専門性が高まる」との回答が四〇〜六〇%台で最も多かったが、「実践的な指導力が身に付く」との回答は教員で一一・一%、学校長で一七・一%、教育委員会で一六・二%、大学で一六・三%といずれも一〇%台で、学生の三一・八%の期待とは対照的な結果となった。教職課程を修士まで引き上げた場合の問題点については、「学生の経済的な負担が大きくなる」ことを指摘する意見が、教員、学校長、教育委員会、大学、学生で最も高かった。
 教員免許更新制の効果に関しては、教員の「とてもある」「ややある」の回答は、「最新の知識技能の習得」の分野で両者合わせて四〇・〇%と最も高かったが、「児童生徒への質の高い教育の提供」は二四・四%にとどまった。各質問項目で、効果が「あまりない」「全くない」との回答は四〇〜六〇%台にも上っており、学校長や教育委員会でもほぼ同様の傾向だ。免許状更新講習を受講した教員では、約五〇%前後の割合で、最新の教育成果や高い専門性、新たな視点の獲得、良い刺激といった観点から評価する意見があり、学校長でも六〇%前後の割合で評価の回答がみられたが、評価の大半は「ややそう思う」で、「とてもそう思う」との積極的評価は学校長や教育委員会では一〇%にも満たなかった。
 必要とされる教員の資質能力を確保するための制度については、「任用後の研修制度」を挙げる意見が多く、教職課程を有する大学の回答でも、「子ども理解力」「児童・生徒指導力」などの項目では、任用後の研修を挙げる回答が「大学等における養成カリキュラム」を上回った。
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