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記事2011年11月13日 2221号 (1面) 
高校改革の本格的検討20年ぶりに始動
中教審初等中等教育分科会高校教育部会が初会合
23年度内に検討課題絞り込み 高校の質保証など論点に
 中央教育審議会初等中等教育分科会に新設された高等学校教育部会の第一回会合が十月四日、文部科学省内で開かれ、高校教育改革の本格的検討が二十年ぶりに始動した。今後取り上げる課題については今年度中に固め、来年度一年間かけ課題について討議する予定。委員は二十二人。私立高校関係者としては長塚篤夫・順天中学校・高校長、眞砂和典・関西学院千里国際中等部・高等部校長、和田孫博・灘中学校・高校長が参加している。部会長は小川正人・放送大学教授。

 高校教育改革に関しては、国の現行の「教育振興基本計画」に、社会の信頼に応える学士課程教育等の実現のため、高校と大学の接続の円滑化、確かな学力の保証のため高校生の学習成果を多面的・客観的に評価する取り組みを進め、結果を高校の指導改善等に活用することなどを通じた教育の質の保証と向上を促進等が盛り込まれている。
 また、民主党政権発足以降、野田内閣誕生まで文部科学副大臣を務めてきた鈴木寛氏(現在は民主党政策調査会文部科学部門会議座長)が高校教育の見直しの必要性を指摘、同氏が主導する形で昨年十一月から今年八月まで七回、高校教育の関係者からヒアリングを行っており、昨年秋以降、都道府県教育委員からの書面による意見聴取、同省職員よる高校教育関係者からのインタビューも行われてきた。
 そうした意見聴取等を通じ浮かび上がった課題が、初会合では検討課題例として提示された。
 この検討課題例は、@個々の生徒の学習進度・理解等に応じた学びのシステムの構築A社会の要請にこたえる人材養成機関としての機能の充実B個々の人格形成の場としての機能の再構築C科学・技術の進展や産業界との連携等による教育方法等の刷新の四点が柱。
 具体的には、中学校卒業者のほぼ全員が高校に進学する中で、生徒一人一人の能力・適性等への対応、高校生の学力保証、生徒の優れた才能や個性の伸長、グローバル人材育成、情報活用能力育成、キャリア教育充実、専門学科等の職業教育充実、コミュニケーション能力・規範意識・社会参画態度等の育成、不登校や中退者を出さないための方策検討、情報通信技術を活用した教育、地域や産業界との連携等を検討課題例として挙げている。
 どの課題も現代の高校教育が抱える課題。検討課題例は、今後の検討のたたき台の材料という性格のもので、同部会がどの課題を検討していくかは今後、確定する。
 十一月四日は、初めての部会ということから、出席の各委員会が高校教育をめぐる問題意識などを語った。
 高校教育部会での委員の主な発言要旨は別掲の通り。

高校教育部会での委員の主な発言

■安彦忠彦・早稲田大学教育・総合科学学術院教授「進学準備教育に公教育がからめ捕られる。公教育としての高校教育をしっかり考えたい」
■安西祐一郎・独立行政法人日本学術振興会理事長「高校の学びのセーフティーネット、高大連携が大事だ」
■川嶋太津夫・神戸大学大学推進機構教授「高校は義務教育ではない。学習指導要領のコントロールを受けるのか。受けているのに多様化している」
■金子元久・独立行政法人国立財務経営センター教授「高校生学力到達度テストが年間何回もあればいい。合否ではなく教科の到達度を測る」
■北城恪太郎・学校法人国際基督教大学理事長「有力大学の入試を見直さないと高校教育の歪みは直らない」
■荒瀬克己・京都市立堀川高校長「高校の校長は2、3年で異動する。学校経営の観点から組織のあり方を考えることも大事」
■アキレス美知子・株式会社資生堂執行役員「広い意味でグローバル人材養成を考えるべきだ。普通科をもっと魅力的にしていい」
■及川良一・東京都立三田高校長「必履修の科目を少なく、ミニマムの部分をもっと緩やかにして、それを前提に修得主義にすべきだ」
■小杉礼子・独立行政法人労働政策研究・研修機構総括研究員「高校中退後は厳しく、就職ができない。職業学科卒の方が無業率が高い。学習習慣が大事だ」
■長塚篤夫・順天中学校・高校長「広域通信制の高校に一部問題がある。質保証があるのか。評価をしっかりすべきだ」
■眞砂和典・関西学院千里国際中等部・高等部校長「少人数教育ができればかなり問題は解決される」
■和田孫博・灘中学・高校長「中学と高校の連関が希薄。高校にしわ寄せ。公立中から公立高校に進学して授業の内容が分からず、意欲を低下させている」
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