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記事2011年1月23日 2193号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
次期分科会へ引き継ぐ課題整理
機能別分化で具体策求める意見
大学分科会

 中央教育審議会大学分科会(分科会長=安西祐一郎・慶應義塾学事顧問)は一月十九日、文部科学省内で、今期の最終となる会議を開き、次期中教審に引き継ぐ検討課題の整理を行った。今月三十一日に開かれる中教審総会で報告する。
 第五期の審議状況を整理するとともに、今後検討すべき課題を@教育の質の保証と向上A機能別分化と大学間の連携の促進B教育研究機能の充実のための組織・経営の基盤強化―の三つの観点からまとめた。このうち、質保証の観点からは、設置基準・設置認可審査・認証評価それぞれの改善や、グローバル化への対応などが挙げられた。
 委員からは、機能別分化について「推進していくには、それに伴う評価と財政的支援が必要」「政策誘導で可視化していく必要がある」など促進するための具体的な政策を求める意見が出た。また、「学生の満足度という視点から質保証について、もっと議論を」「大学は多様化しているが個性化はしていない。なぜできないのか、検証をしてほしい」「大学間連携には時間がかかる。具体的に促進する施策を早急に考える必要がある」などの意見が出た。

中高一貫教育
学習意欲の向上策など検討
学力入試解禁を求める声も

学校段階間連携・接続等作業部会

 中央教育審議会初等中等教育分科会の「学校段階間の連携・接続等に関する作業部会」(小川正人主査=放送大学教養学部教授)は一月二十日、文部科学省内で三回目の会合を開き、中高一貫教育校に関して、三人の委員から、生徒の学習意欲を高める取り組みや、入学者選抜の実情等を聴取したほか、同省が昨年三月に行った「中高一貫教育実態調査」の結果概要が報告された。この作業部会は同省による制度創設から十年を迎えた中高一貫教育の教育効果等を検証するため設置された。
 この日、中高一貫教育の実情等を報告したのは、志田重道・新潟県立柏崎翔洋中等教育学校長、直原裕・東京都教育庁都立学校教育部長、河合優年・武庫川女子大学教育研究所教授・大学院臨床教育学研究科長の三人。
 このうち志田校長は、学習意欲の向上のために夏期休業中に学習合宿を開催、前期課程修了時にアチーブメントテストを課し、四年次には九泊十日の海外研修旅行(費用は約三十万円、生徒の家庭が分割で負担)を実施していること等を報告。
 入学者選抜では、小学校調査書のほか、「作文」(四十五分)、「グループ活動」(八十分、課題への対応をグループでまとめる)、「面接」で総合的に判断していると説明した。
 都教育庁の直原部長は、自分自身で問題を発見し、筋道を立てて考えようとする態度や能力などに着目する適性検査をしていることなどを説明したが、「適性検査だけでいいのか。教科に則した理解が全く問われなくていいのか」などと語り、学力検査を制限している現行制度に疑問を投げかけた。志田校長も学力試験を制限していることへの疑問に言及、生徒による中高一貫教育の評価結果を報告した河合教授も入学者選抜に抽選を課している学校の生徒からは自分の実力以外で合否が決まることの理不尽さを訴える声も聞かれたと報告した。また河合教授は、中高一貫教育に対する生徒の満足度は在学時より卒業後の方が高いものの、学習意欲の中だるみ、人間関係が不安定になる時期があることなど課題も報告した。さらに大学入学後に伸びるような学生の育成も部分的に達成しているなどとも語った。次回は教員の負担等を検討する。

施設・設備基準の明確化など
論点整理を取りまとめ

大学分科会質保証システム部会

 中央教育審議会大学分科会の質保証システム部会(部会長=黒田壽二・金沢工業大学学園長・総長)は一月十四日、文部科学省内で、最終会議を開き、公的な質保証システムの改善と認証評価についての論点整理の取りまとめを行った。
 設置基準については、施設・設備の基準の明確化、独立大学院の基準の明確化、短期大学設置基準のあり方―などが検討を要する事項として挙げられた。また、設置認可審査については、学生確保の見通し等を踏まえた検討や、学際分野の審査体制の見直しなどが課題として挙がっている。
 認証評価に関しては、不適合となった場合の取り扱いや、専門職大学院の特例措置の見直し、所定の期間内に認証評価を受けない大学への対応などが、今後の検討課題として残されている。
 委員からは、機能別分化を支援する設置基準や、大学の多様化や地域の実情に即した評価体制、国際的な認証評価との関係などについて、次期中教審での議論を求める意見の他、どのような大学像を目指すのかというマクロな視点からの議論を求める意見も出た。

T等を活用した遠隔学習の環境整備など
今後の検討課題等取りまとめ

生涯学習分科会

 中央教育審議会生涯学習分科会(分科会長=大日向雅美・恵泉女学園大学大学院平和学研究科教授)の今期の最終会議が一月十七日、東京・千代田区の学士会館で開かれ、次期中教審に引き継ぐ検討課題等について取りまとめを行った。三十一日に開かれる中教審総会で報告する。
 平成二十年に出された中教審答申「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」を踏まえた上で、生涯学習・社会教育の振興について、地域、ライフステージ、質保証と成果活用等―の三つの視点から具体的課題を整理した。
 地域の課題としては、生涯学習プラットフォームの形成とコーディネーターの確保、地域の活動に参画したい人と、学校等の活動の場を結ぶための仕組みづくりとコーディネーターの育成などが挙がった。また、成人や社会人等を対象とした学習機会の充実や、IT等を活用した遠隔学習の環境整備、生涯学習・社会教育の質保証と学習成果の評価なども課題として挙げられた。
 委員からは、社会教育主事や司書、学芸員等の専門職員の役割への期待や、地域の学習活動の調整役となるコーディネーターの重要性などが指摘された。

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