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記事2010年9月3日 2180号 (1面) 
私大等経常費補助3.3%の増額を要求
文部科学省 平成23年度概算要求提出
私立高校等も増額要求 1000億円台回復へ
私大特別補助は「特別枠」活用
 文部科学省は八月三十一日までに財務省に平成二十三年度概算要求を提出した。民主党政権下で初の本格的な概算要求。それによると私学関係予算の要求額は、私立大学等経常費補助が前年度比百七億五千万円(三・三%)増の三千三百二十九億三千二百万円に、また私立高等学校等経常費助成費等補助は同十二億五千万円(一・三%)増の一千十一億円となるなど、私学助成関係予算の要求額は前年度比百二十二億五千百万円(二・八%)増の四千五百十二億八千六百万円となった。

 七月に閣議決定された、概算要求基準では、社会保障関係費や地方交付税措置など一部を除き基本的には前年度比一〇%の減額要求とされたため、来年度の私学関係予算も削減が危ぶまれたが、概算要求の段階では、前年度比増額要求となった。
 このうち私立大学等経常費補助については、一般補助と特別補助の大幅な組み替えを行っているのが特徴で、一般補助は前年度比六百九十六億六千四百万円(三二・九%)増の二千八百十六億三千二百万円、特別補助は五百八十九億一千四百万円(五三・五%)減の五百十三億円の要求。この特別補助は従来とは異なるもので、新成長戦略を踏まえ、私立大学等のマネジメント改革を伴った組織的な取り組みの定着を図るもの。具体的には▽成長分野で雇用に結びつく人材の育成▽社会人学生の組織的な受け入れへの支援▽大学等の国際交流の基盤整備への支援▽大学院等の持続可能性のある発展の基盤整備への支援▽大学ガバナンス強化支援▽授業料減免や学生の経済的支援体制等の充実の六項目が挙げられている。特別補助五百十三億円は、今回の概算要求で新設された「元気な日本復活特別枠」を全額活用したもので、授業料減免については五十八億円、それ以外の五項目については四百五十五億円の要望となっている。
 私立大学授業料減免等補助は、私立大学等が経済的に修学困難な学生を対象に実施している授業料減免等への支援を拡充するもので、対象学生を二十二年度の約三万三千人から約四万一千人(学生全体の約二・〇%)にする。また学生の経済的負担軽減のための支援体制を学内に構築している大学等への支援を新設する。因みに国立大学に関しては授業料免除率を学部・大学院修士課程で八・四%、同博士課程では一二・五%にまで引き上げる要望。
 私立高等学校等経常費助成費等補助の要求額の内訳に大幅な変更はないが、一般補助が八百九十二億七千二百万円、特別補助が九十億八千六百万円、特定教育方法支援事業が二十七億四千二百万円。一般補助の増額によって新学習指導要領の実施に向けた教育環境の充実、感染症予防のための衛生管理の強化などを推進する計画。また特別補助では障害児の在籍する私立幼稚園への支援を充実する。一般補助の生徒等一人当たり補助単価は学校種によって〇・六%〜一・五%の範囲で増額されている。
 施設設備関係補助金では、私立大学等の教育研究装置・施設の整備に対する補助が前年度比四千三百万円(〇・六%)増の七十四億八千八百万円、私立高等学校等の施設整備に対する補助は前年度比一億一千百万円(六・五%)増の十八億一千百万円の要求。これらの施設補助が増額要求となっているのは、学校施設耐震化事業等の拡充を要求しているためで、それ以外の研究装置や高校等の高機能化整備事業は減額要求となっている。このうち私立高校等の施設の耐震化に関しては、従来の耐震補強に加え、耐震性の低い校舎等の改築(建て替え)に対する補助も要求している。
 設備関係では、私立大学等の研究設備等の整備費に対する補助は前年度比約三億三千四百万円(八・〇%)減の約三十八億七千万円の要求。私立高等学校等IT教育設備整備推進事業も前年度比一億二千百万円(一五・一%)減の六億七千九百万円の要求。
 私立学校施設高度化推進事業費補助は前年度比六億二百万円(三四・二%)増の二十三億六千万円の要求。これは私学事業団の融資を受けて実施される私立学校の老朽校舎や旧耐震基準で建てられた学校施設の建て替え整備事業、耐震補強事業、大学病院建て替え整備事業に対する利子助成。




元気な日本復活特別枠
文科省は10項目8628億円要望

 文部科学省が「元気な日本復活特別枠」を活用して要望したのは、私学関係のものを含めて十項目、総額で八千六百二十八億円。内訳は、@国公立学校施設の耐震化を推進する「安全で質の高い学校施設の整備」(一千八百九十八億円)Aデジタル教科書や教材の実証研究などを行う「未来を拓く学び・学校創造戦略」(二十億円)B「小学校一・二年生における三十五人学級の実現」(二千二百四十七億円)C高校生に対する給付型奨学金事業の創設や大学等への総合的な経済支援プログラムの展開など「学習者の視点に立った総合的な学び支援及び『新しい公共』の担い手育成プログラム」(一千三百三十一億円)D国私立大学の教育研究基盤強化事業など「『強い人材』育成のための大学の機能強化イニシアティブ」(一千二百億円)E若手研究者のチャレンジを支援する科学研究費の改革など「成長を牽引する若手研究人材の総合育成・支援イニシアティブ」(四百八十四億円)F革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの構築など「元気な日本復活!二大イノベーション」(七百八十八億円)G我が国の宇宙技術の世界展開など「我が国の強み・特色を生かした日本発『人材・技術』の世界展開」(四百四十八億円)H「元気な日本スポーツ立国プロジェクト」(五十四億円)I「文化芸術による日本元気復活プラン」(百五十八億円)。このうちCの高校生に対する給付型奨学金事業は百二十二億円の要望で、一つは、年収約三百五十万円未満の生徒(国公私立高校生)約五十万三千人が対象で、支給額は一万八千三百円で教科書等図書費相当額。昨年度の概算要求でも同様の要求を行い、ゼロ査定となった。その際、高校の入学金も対象になっていたが、その後、国の資金を原資に各都道府県に創設された修学基金の対象になったため、二十三年度の概算要求では入学金は外されている。
 もう一つが特定扶養控除見直しに伴って負担増となる生徒十六万一千人が対象。これらは公立の定時制・通信制高校生(約十一万人)と公立の特別支援学校・高等部の生徒(約五万一千人)が対象。支給額は特定扶養控除見直しに伴う負担増額(二万四千円〜六万二千円)。


寄附税制の拡充など
文科省が税制改正要望

 文部科学省は平成二十三年度税制改正要望をまとめ、八月三十日に公表した。今回の要望は、「新しい公共」形成のために寄附税制の拡充、政府の「新成長戦略」に沿って科学・技術・情報通信立国戦略に資する研究開発への税制優遇の拡充等を要望している。
 このうち寄附税制の拡充では、@日本版「プランド・ギビング」信託の創設(非営利団体に寄附する信託の寄附優遇対象化)[所得税、相続税、住民税]、A個人からの寄附の税額控除の導入[所得税]、B個人住民税における寄附金控除の適用下限額の引き下げ(拡充)[住民税]等を要望している。
 @の日本版プランド・ギビング信託の創設は、非営利団体に対する寄附を目的とする信託について寄付金控除の適用、運用時非課税の税制措置を講じるもの。米国では、非営利団体への寄附を目的とした金銭信託の場合、寄付金控除が受けられるほか、委託者が生存中(または一定期間)信託財産の一定額が委託者にも戻され、信託期間終了後(または委託者死亡後)には残余財産が非営利団体に交付されるものとなっている。Aは給付型奨学金事業等を行う公益社団・財団、学校法人に対する個人からの寄附については、新たに寄附金額の四〇%を税額控除する制度を創設するもの。当該法人が住民税の寄附金控除の対象として地方自治体から指定されている場合には住民税の寄附金控除率一〇%も適用され、合計で五〇%の税額控除となる。Bは個人住民税の寄附金税額控除の適用下限額を現行の五千円から二千円に引き下げるもの。そのほか寄附金控除の年末調整の対象化(控除手続きに係る負担の軽減)も要望している。このほか教育の振興としては、次世代育成支援のための包括的・一元的な制度構築のための税制上の所要の措置を、また図書館・博物館・幼稚園を設置する一般社団・財団法人に係る非課税措置の創設[不動産取得税、固定資産税、都市計画税]を求めている。科学技術の振興では、国立研究開発機関制度(仮称)の創設を見据えて、国税、地方税における税制上の所要の措置を講じることなどを要望している。スポーツの振興では独立行政法人日本スポーツ振興センターのスポーツ振興基金による優秀な選手・指導者を対象とする助成事業に企業が寄附した場合、全額損金算入できる指定寄付金とすることを要望している。

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