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記事2010年9月13日 2181号 (8面) 
ユニーク教育 (190)
戸板中学校・戸板女子高等学校
自分の価値観をもって前向きな女性育成
「スタディセルフチェックノート」で成果上げる
 閑静で緑豊かな環境の中に立地する戸板中学校・戸板女子高等学校(杉岡啓子校長、東京都世田谷区)は今、大規模な改革の下で、女子校ならではのきめ細かい教育で、学力、人間力を伸ばす教育を展開している。
 同校の学校改革は二〇〇三年から始まった。それは、明るく安定した環境で生徒は育つという確信からだった。その成果は三年間で四年制大学進学者が二倍という結果になって表れた。二〇〇六年以降、杉岡校長は教師力の強化のための取り組みをはじめ、二〇〇九年新カリキュラムの開始、二〇一〇年新クラス編成をスタートさせた。
 同校は「中高六年間は社会に出たときの基盤となる時期である」という認識の下に、「他人と比較してではなく、自分自身はどうありたいかという自分の価値観をしっかりと持って、自分を信じて全力を尽くす前向きな女性を育てたい」(杉岡校長)と考えている。この女性像を目指し、教育の柱を、@「学力」A「人間力」B「教育力」の三本に置いている。
 同校では、六年間を二学年ずつ三つのステージに分けて、学力、人間力の両面を最大限に伸ばすシステムにしている。
 @「学力」は、第一ステージ(一・二年)では「正しく学ぶ・幅広く学ぶ」、第二ステージ(三・四年)では「自主的に学ぶ・前向きに学ぶ」、第三ステージ(五・六年)では「希望を高く掲げ困難を乗り越えて学ぶ」――ことで、目標の達成を目指す。A「人間力」は、第一ステージでは「学習習慣の確立」、第二ステージでは「活躍の場をみつける 社会に目を向け進路選択をする」、第三ステージでは「進路実現に向けてアクションをおこす」――を目指している。
 また、B「教育力」については、生徒と教師が向き合い、支え合い、生徒の力となるために、教師も学ぶ姿勢を持ち、指導力強化のためにさまざまな研修に取り組んでいる。生徒に適切なアドバイスをしながら、生徒が勇気を持って一歩踏み出せるよう背中を押してやる、同校が目指す教員だ。
 この中で、第一ステージを「しっかりと足場を固める大切な時期」ととらえ、習熟度別授業や体験型授業で学習意欲を引き出すとともに、学習・生活ノート「スタディセルフチェックノート」で学習成果を上げている。これは教員の手づくりのオリジナルノートで、一日の行動予定と足跡を記録するもの。このノートには、家での学習時間や睡眠時間から宿題・提出物・テスト・時間割・持ち物(翌日の予定の確認)、あいさつ・チャイム着席・忘れ物のチャックなどの項目を設けている。これを記録・確認する習慣をつけることによって、自己管理ができる能力が育(はぐく)まれていくのである。さらに、保護者がコメントする個所もあり、担任が必ず目を通し、コメントして返却している。
 杉岡校長は「これからの女性は何か判断を迫られたときに、自分で考え、道を切り拓(ひら)いていかなければなりません」という信念の下に、女子教育を進めていく方針だ。
 同校の校訓は「知・好・楽」。「ものごとを知ることによって好きになり、好きになることによって楽しむことができる。楽しむ境地に至ってそれは初めて自分自身のものとなり、自らを豊かにすることができる」という意味だ。
 「私は、この『知』から『楽』への道程が本校の神髄であると考えています。生徒一人ひとりが、六年間の学びを通してこの精神を体得し、それぞれの『楽』を極めて、豊かな人生を築いていってくれるよう、われわれ教員は導いています」と杉岡校長は語る。二〇一一年、特進クラス一期生が卒業する。その結果に期待が高まっている。
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