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記事2010年9月13日 2181号 (6面) 
OECD  図表でみる教育OECDインディケータ2010年版公表
教育への公財政支出 雇用や税収増に効果
学校選択制の導入 諸外国と比べ日本は低調
 経済協力開発機構(OECD、加盟国三十二カ国)は、九月七日(日本時間)、『図表でみる教育 OECDインディケータ(二〇一〇年版)』を公表した。この報告書は、各国政府が教育政策等の検討をする際の参考にと、国際比較が可能な指標の形で、教育機関の成果と教育・学習の成果、教育への支出と人的資源、教育機会・在学・進学の状況、学習環境と学校組織等をまとめたもの。二〇一〇年版は二〇〇七年の状況を掲載している。このうち教育への投資効果をみると、教育に投資された公共資源は、最終的には大きな税収となって国に還元される、また教育は個人を経済的リスクから守る役割を担っているとしている。
 高等教育(大学)を修了した男性は後期中等教育(高校)までしか修了していない場合と比較すると、所得税や社会保障等に対する寄与として、十一万九千ドルの付加価値を生み出すと試算しており、それに投資された公財政を差し引いても八万六千ドルとなり、高等教育に対する公共投資額(一人当たり)の約三倍のプラス効果≠もたらしている、としている。我が国の場合でも後期中等教育修了者の所得を一〇〇とした場合、前期中等教育(中学校)修了者は八〇、高等教育修了者は一四八になるとしている。
 また経済危機の中で失業率にも違いが生じており、OECD全体では二〇〇八年の労働市場で、高等教育修了者の失業率が四%以下なのに対して、後期中等教育未修了者の失業率はしばしば九%を上回る、としている。
 同報告書では、今回初めて学校選択制、保護者の公教育に対する影響力を調査しているが、一九八五年以降、OECD諸国では、学校選択制に関して、学校間の切磋琢磨を生み、それぞれの学校が幅広い生徒に対応する必要がなくなり、教育サービスを効率的に行うことができるなどの理由から導入が始まったが、我が国ではその動きは限定的だった。初等教育(小学校)段階ではフィンランド、ドイツ、イタリア、米国等で、前期中等教育段階では十八カ国で学校選択制導入の広がりが見られた。
 また保護者の公教育への関与に関しては、OECD加盟三十カ国中二十七カ国で、保護者が公教育に対して不服申し立てをするための公的な手続き規定があるが、日本、韓国、メキシコはそうした規定がなく、我が国は保護者の養育への関与がなお低調だとしている。
 学校選択制と生徒等の学力の関係に関しては、OECDは、今年十二月に発表する「PISA調査結果」の中で言及する予定だが、学級規模と学力の相関関係について、OECDでは、学級規模の縮小は学力を引き上げる要因の一つに過ぎず、そのほかにも優秀な教員の確保や教育環境などの要因があるとしている。
 一方、例年公表している、教育機関への公財政支出の対GDP比をみると、我が国は、初等中等教育ではOECD各国平均三・三%を下回る二・五%で、OECD加盟国中、下から二番目。高等教育ではOECD各国平均一・〇%の半分の〇・五%で、下から二番目。
 全教育段階にすると最下位の三・三%(OECD各国平均は四・八%)という低迷状態に大きな変化はなかった。また我が国は教育費の私費負担割合が高いのも特徴で、私立学校の比率が高い高等教育では、私費負担割合は六七・五%(OECD各国平均は三〇・九%)、そのうち家計負担率は五一・一%。私立学校の比率が低い、初等中等教育では私費負担比率が一〇・一%(同九・七%)、そのうちの家計負担率は七・六%だった。
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