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記事2010年5月3日 2170号 (1面) 
新成長戦略策定で文科省からヒアリング
成長戦略策定会議・事務局チーム

 昨年十二月に閣議決定した新成長戦略の基本方針に沿って、新成長戦略の全体像の取りまとめ作業を続けている政府の成長戦略策定会議(議長=鳩山由紀夫総理大臣)の事務局チーム(事務局総括=荒井聡・総理大臣補佐官)は四月二十八日、文部科学省から新成長戦略に盛り込む意向の施策等について聴取、意見交換した。新成長戦略の全体像は工程表を含め六月に閣議決定の予定。




文部科学省
理数系人材の育成強化
高等教育の段階的無償化など目指す


 ヒアリングには文部科学省から後藤斎、高井美穂両大臣政務官が、成長戦略事務局チームは津村啓介・内閣府大臣政務官、近藤洋介・経済産業大臣政務官が出席した。
 この中で後藤大臣政務官は文部科学省が新成長戦略に盛り込む意向の「科学・技術立国戦略」「教育戦略(雇用・人材戦略関係)」などを説明した。
 このうち「科学・技術立国戦略」では、内閣の意思として科学・技術戦略を企画・立案する強力な司令塔(科学技術イノべーション戦略本部・仮称)の整備、国を代表して国家的な重要課題の研究開発を担う法人に「国立研究開発機関」(仮称)の名称や機能を付与、二〇二〇年度までに政府研究開発投資額をGDP比一%以上にするという投資目標を設ける、理数好きな若者が競い合う「科学甲子園」等の創設、大学発イノベーションの推進による地域活性化及び国際競争力強化などを挙げている。
 一方、「教育戦略(雇用・人材戦略関係)」に関しては、成長の資本たる「人財力」の裾野を拡大するため、初等中等教育の質の抜本的強化を打ち出しており、需要者(学習者等)サイドに立った教育の質の向上、教員の教育力の向上を図り、国際的な学習到達度調査で日本が世界トップレベルになることを目指す、としている。需要者サイドに立った教育の質の向上策としては、地域コミュニティ学校や学校関係者評価の普及、地域の判断による学校選択制の導入、安全・安心で多様な指導方法を推進するための学校施設づくり(耐震化、バリアフリー化等)等を挙げている。学校選択制に関しては一律導入には慎重な姿勢。
 高等教育関係では、世界的な「リーディング大学院」の形成、大学の世界展開力の強化による留学生交流の促進、専修学校への留学生の受け入れ数を、現在の受け入れ枠(総入学定員の二分の一内)を弾力化するなどして六万人(現状は約二万八千人)にまで拡大することを目指す。
 高等教育の実質無償化を段階的に実施する。国立大学に関しては平成二十二年度から十年間で学部・大学院生の一五%が授業料減免を受けられるように拡大する。公立大学に関しても国立大学と同様な措置が受けられるよう地方財政措置の充実を図る。私立大学等に関しては学生に対する経済的支援に取り組む大学等への国の支援を大幅に拡充する、また大学教育を支える基盤的経費(私学助成など)を拡充する、などとしている。国立大学が立地する経済効果は例えば鹿児島大学では八百六十七億円としている。
 生涯学習の機会やキャリア教育・職業教育の充実では、職業と教育の繋がりの見える化システムの構築、社会人の学修支援プラン、専修学校への単位制・通信制の導入、民間教育サービスの健全な発展と「新しい公共」の担い手育成などを推進する意向。こうした施策を実現するため、教育への公財政支出をOECD平均並みのGDP比五%以上を目指す考え。


私立学校施設の耐震化
約五千五百億円の経済波及効果


 成長戦略策定会議は、各省庁の求める施策を新成長戦略に盛り込むに当たっては、個々の施策に関して経済効果や雇用効果、費用対効果の明示を求めている。そのため、様々な教育投資の費用対効果や雇用効果などが試算されている。
 例えば大学教育の税収増加・公的支出抑制効果に関しては、大学生一人当たりの公財政教育支出約二百三十二万円に対して、大学卒業者の税収増加額、失業給付抑制額、逸失税収抑制額、犯罪費用抑制額(いずれも一人当たり)の合計額は約四百七十五万円となり、大学教育による便益から費用を引いた合計額は毎年一兆円以上、大卒者を輩出することの消費拡大効果は毎年三兆五千億円以上としている。高等教育への投資額をGDP比〇・四四%分増やしOECD平均(一・〇%)並の〇・九四%に拡大すれば、GDPを二〇二〇年には約四兆円、二〇五〇年には約二十七兆円押し上げる効果がある、としている。私立学校施設の耐震化は約五千五百億円の経済波及効果と約二万八千人の雇用効果を創出する、としている。
 ICTを最大限活用した二十一世紀型スクール・ラーニングへの転換(デジタル教科書・教材の普及促進、情報端末・デジタル機器等の整備充実、校務支援システム等の整備充実等)に関しては、今後十年間で約七千五百億円の費用が見込まれるが、一兆五千億円以上の経済効果、約七千人の雇用効果があると試算。大学生の就業力向上プラン実施で、フリーターの半数が正規職員となれば二兆二千二百三十億円の経済効果と約八十五万人の新規雇用者数の効果があると試算している。社会人の学習支援策では五千億円の経済効果としている。

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