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記事2010年5月23日 2171号 (1面) 
ICTを最大限に活用した21世紀型スクール・ラーニングへ
どうなる学校の将来像
教科書・教材デジタル化
児童・生徒一人ひとりに情報端末

 鳩山内閣は現在、平成二十三年度政府予算の概算要求編成作業に取り組んでいる。概算要求とは、各省庁が来年度はこれだけの事業を実施したいので、これだけの金額の予算が必要だとして、国の財布≠預かる財務省に要求するもの。例年、要求に当たっては、事前に要求基準が定められ、各省庁が要求できる限度額が決定される。概算要求後は、各省庁と財務省との間で折衝等が行われ、年末に政府の来年度予算案が決定される段取りだ。現在は、各省庁が概算要求の内容を固めつつある段階。


 この事業は、@デジタル教科書・教材の普及・促進等A情報端末・デジタル機器等の整備充実B校務支援システム等の整備充実が三本柱の事業。分かりやすい授業の実現、教職員の負担軽減、児童生徒の情報活用能力の向上を目的としている。同時に経済対策、雇用対策の側面もある。
 このうち@に関しては、デジタル教科書(教科書準拠型デジタル教材)、教材の普及・促進、教員の創意工夫を生かしたデジタル教材作成・提供への支援を、Aに関しては、児童生徒一人一台の情報端末(電子書籍リーダー等の情報端末を含む)の配置、デジタル機器のすべての教室への普及、校内LAN整備率一〇〇%の実現を、Bに関しては、教員の負担を軽減する校務支援システム(児童生徒の学習履歴の管理を含む)の全国普及、学校経営の改善等に資する学校・家庭・地域の情報連携の強化を進める意向。
 具体的な課題に関して文部科学省は、目下、各界の専門家を集めて教育の情報化に関わる懇談会を開催、今後進めるべき具体策等の検討を続けている。教科書会社や映像や記事のコンテンツを多数抱える放送局や新聞社の専門家も参加、子どもたちに持たせる情報端末ではニンテンドーDSのように二画面がある方がいいといった意見やiPadの話題も出ている。情報機器メーカー等を招き非公開で懇談も行われている。
 我が国の学校現場の情報化の立ち遅れは、国際的に見ても顕著になってきており、同省も数字を挙げて整備充実の必要性を強調している。
 すべて公立学校に関する数値だが、デジタルテレビ(公立幼小中高校等の教育用デジタルテレビ)の整備率は、一七・九%、電子黒板(公立小中学校)の整備率は二六・〇%、教育用コンピュータ(公立小中高校等)の整備率は児童生徒七・二人に一台、校務用コンピュータ(公立小中高校等の全教員)の整備率は六一・六%、公立小中高校等の普通教室における校内LANの整備率は六四・〇%(いずれも平成二十一年三月現在で)など。情報化の影の部分への対応も含めて「教育の情報化ビジョン(仮称)」を策定し、ソフト・ヒューマン・インフラを一体的に推進する必要性を強調している。
 同省では、今後十年間で約七千五百億円の費用が見込まれるとしており、一兆五千億円以上の経済効果、約七千人の雇用効果を試算している。
 教育の情報化に関しては、総務省もタブレットPC、デジタル教材等を活用し、児童生徒が互いに学び合い、教え合う「協働教育」についてガイドライン化し、計画的に推進していく原口ビジョンUを発表、二〇二〇年までにフューチャースクールの全国展開を完了させるとしている。同事業による経済波及効果は一兆五千億円。
 文部科学省のICT以外の計画では、成長の資本たる「人財力」の裾野を拡大するため、初等中等教育の質の抜本的強化を打ち出しており、需要者(学習者等)サイドに立った教育の質の向上、教員の教育力の向上を図り、国際的な学習到達度調査で日本が世界トップレベルになることを目指す、としている。
 需要者サイドに立った教育の質の向上策としては、地域コミュニティ学校や学校関係者評価の普及、地域の判断による学校選択制の導入、安全・安心で多様な指導方法を推進する学校施設づくり(耐震化、バリアフリー化等)等を挙げている。学校選択制に関しては一律導入には慎重な姿勢。
 また少人数学級推進のための新たな教職員定数改善計画を今年度中に策定し、来年度に実施したい意向で、習熟度別少人数指導の効果に関しては、低学力層の児童生徒が最も学習に対する関心・意欲・態度が高まる、正答率が高い、無回答率が低い(=解答意欲が高い)点を指摘している。
 私立学校施設の耐震化も取り上げ、約五千五百億円の経済波及効果と約二万八千人の雇用創出効果を試算している。
 民間教育サービスの健全な発展と「新しい公共」の担い手育成に力を注ぐ方針。検定試験・民間資格の評価・活用システムの構築、教育支援人材等の新たな評価・活用システムの構築に今後四年間程度で取り組む。前者は、検定事業者による自己評価・情報公開、外部評価による評価・情報システムを逐次構築する。

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