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記事2010年5月23日 2171号 (1面) 
保護者の教育費負担 公私間の格差解消急務
公費の違いが格差に
わが国の教育支出水準は低調

 鳩山内閣は教育をどう変えていこうと考えているのか――。教員免許更新制の見直し一つとってもなかなか見えにくいが、民主党が考える将来の学校像が平成二十三年度の概算要求が近づくにつれ少しずつ見えてきた。具体的には政府が策定中の新成長戦略の具体的施策に対する文部科学省の要望等から窺うことができる。その代表格の一つといえるのが、「ICTを最大限活用した二十一世紀型スクール・ラーニングへの転換」だ。


 今年三月に決まった平成二十二年度政府予算のうち教育関係では、「高校授業料不徴収」(公立高校生の場合)、「高校生就学支援金」(私立高校生の場合)の新設が近年にない大きな出来事といえる。
 経済格差が教育格差に繋がらないよう、特に所得の低い層を中心に支援策がとられた高校生就学支援金制度と公立高校の授業料無償化には、合わせて三千九百三十三億円が投じられた。
 私立高校生の場合、基本的には最低でも公立高校の授業料(月額約一万円)の支援が出されることになった(学校が生徒に代わって代理受領し、その分授業料額から差し引く)が、それでも公私間で保護者の負担する教育費格差は残ったまま。
 なぜ格差が解消されないのか――。それは公立高校と私立高校では元々税金の投入額が大きく異なるためだ。下表の数値は公立学校の児童生徒等一人当たりに使われた学校教育費(公費)を表す。公立高校を例にとれば、全日制課程で約百十九万円の公費、つまり税金が投入されている(平成十九年度)。このうち受益者(生徒)の自己負担が年間十二万円ほどあるが、それでも私立高校に出されている公費は平均で約三十万円程度。公費の投入額の違いが保護者の公私間の負担額の違いとなって表れている。加えて年間十二万円ほどの公立高校での自己負担も今年度からは、高校無償化政策で国費で賄われることになった。
 私立高校等にとってみれば、都道府県の経常費助成金が頼みの綱であり、学校の存続に欠かせないものとなっている。
 都道府県のこうした私学助成には文部科学省からの補助金と、使い道が限定されていない地方交付税措置(総務省所管)という二つの財源があるが、文科省の補助金は高校等就学支援金が創設されたことから二十二年度は前年度比四十億円(三・九%)の減額となった。地方交付税措置は増えたものの、使途に縛りがないため、私学教育以外に流用されることもあり、中学校や小学校の私学助成額は国の財源措置額を下回っている、あるいは同額の自治体が大半だ。しかも保護者向けの補助金(直接助成)に力を注ぐ自治体もある。
 しかし学校は地域の貴重な社会資本で、知の拠点。私立高校の財政基盤を強化することで多様な教育が生まれ、卒業生を通じて数々の成果が社会に還元されている。私立学校生の活躍は今更言及するまでもない。我が国教育は大きく私立学校(保護者の教育費負担)に依存していながら、諸外国と比べると、教育への支出比率は最低水準。資源のない我が国の財産は人とよく言われるが、教育投資の飛躍的拡充が必要であり、国際競争が増す中では更なる教育の充実が必要といえる。





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