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記事2010年4月3日 2166号 (4面) 
米国電気電子学会リーダーが就活生にアドバイス
必修以外のコースにも挑戦を

 就職活動において自分の希望する企業への就職という結果を出すためには、精神面、方法、ツールなどで、相当な準備がいる。現在、就職内定率が八〇%を切るような経済状況の下で、将来を決める職業を選ばなければならない。また、総務省の調査(二〇〇九年)では、失業率は男性五・四%、女性四・九%という最近ではないほどの厳しい情勢の中で、学生たちは社会に一歩を踏み出さなければならない。このような状況の下で、技術系の専門家として活躍している人たちに、雇用市場で力をつけるために学生は何をするべきかについて、アドバイスしてもらうことも有益だ。



 その専門家の集団で、就職活動を始める学生に熱い視線を送っているのが、技術専門家の組織として世界最大の規模を誇る米国電気電子学会(IEEE=Institute of Electrical&Electronic Engineers)だ。
 この米国電気電子学会は、世界百六十カ国に三十七万五千人以上の会員を擁し、電気、電子、コンピュータなどの分野を三十八の専門部会で網羅している。その活動は、電子製品の標準仕様の制定、技術教育支援、技術系学生支援、研究活動支援、最新技術普及、技術国際会議の開催など世界各地での教育啓蒙などに及んでいる。日本には現在、約一万三千人の会員がおり、そのうち約千五百人が学生会員だ。
 そのIEEEのメンバーが、就職活動を始める学生に基本的なアドバイスを送っている。
 この中で、@カレン・パネッタ氏(IEEE Women in Engineering委員会委員長、米国ボストンのタフツ大学エレクトリカル、コンピューターエンジニアリング教授)は、人間的な奥行きを与えてくれるためにも、必修以外のコースに挑戦してみる必要性をアドバイスする。
 Aエレノア・バウム氏(IEEEのフェローメンバー)は、(大学の)交換プログラムへの参加などで、グローバルなものの考え方を身につけることを強調する。
 B小菅一弘氏(二〇一〇年〜二〇一一年IEEE Robotics and Automation Society会長、東北大学大学院工学研究科教授)は、大学での最先端の研究活動を通じて、問題解決能力を身につけることの大切さをアドバイスしている。
 Cハワード・ミシェル氏(IEEEのRegionalディレクター)は、IEEE学生チャプターなど、キャンパスでの学生活動への参加を奨励している。
 Dリア・ジャミーソン氏(二〇〇七年IEEEの総裁)はスキル、経験、成し遂げてきたことなど、一分間で簡潔に話せるよう、要点をおさえたスピーチの準備が大切だとし、「面接官が身を乗り出すような話ができるようにしておきましょう」とアドバイスしている。
 Eソフィー・ヴァンデブルック氏(IEEEのフェローメンバー、ゼロックス・イノベーション・グループ社長・最高技術責任者)は、大切なのは、その仕事にやりがいを感じるか、チームの一員として楽しく働けるかどうかだ、と指摘している。

知性を備えた人材に


 まとめとして、早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科の横山隆一教授は、社会が求めている人材として、未解決な新たな問題に取り組み、解決案を見いだす能力、言い換えれば知性(Intelligence)を備えた人材を挙げ、この知性とは「経験から学ぶ能力や知識を獲得する能力、新しい事態が発生した時に迅速かつ適切に対応する能力、また、問題を見極めてこれを解決するために推論を用いる能力」としている。
 これを踏まえ、とりわけ、エンジニアは在学中にこの能力を身につけるか、身につけるための方法を学んでおくべきだとしている。自分の進むべき道を見いだし、またどの企業がそれを実現させてくれるかを知るには、技術分野の技術開発や企業戦略に関する世界最高レベルの情報を発信しているIEEEの学術誌『proceeding』あるいは、国際学会論文誌を参照することを勧める。その上で、「問題解決能力、人的ネットワーク、発表(語学とディベート)能力は、これからのエンジニアにとっては、三種の神器といえ、これらは自分から出かけていき、実践しなければ身につかないものです」とアドバイスしている。

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