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記事2010年4月23日 2168号 (1面) 
文部科学省 初の熟議シンポジウム開催
教育現場の声集め政策立案
小中校にファシリテーター配置
チームで支援教員負担軽減へ

 文部科学省は四月十七日、「熟議に基づく教育政策シンポジウム」を開催した。このシンポジウムは、教員、保護者、大学生、NPOで活動する会社員、大学教授ら教育現場に関わる様々な立場の人が集まり、熟慮と討議を重ねながら文教政策を決定していく上での課題を見極めようという初めての試み。鈴木寛副大臣が十年来構想してきたもの。今後、WEBサイト「熟議カケアイ」等で熟議を続け、中央教育審議会等の専門家の協力も得て政治主導で文教政策を決定していく。


 この日は、同省三階の講堂に、百五十人近い熟議参加者が集まり、九つのグループに分かれて約二時間の討議を行った。各グループには同省の幹部職員らが進行役として参加、鈴木副大臣と同省の「熟議に基づく教育政策形成の在り方に関する懇談会」の金子郁容座長が各グループを回り、議論に参加。熟議の模様は、インターネット等で同時配信される、という形式で進められた。
 今回の熟議のテーマは、「小・中学校をよりよくするためにはどうすればよいか」。出席者からは、午前中は児童の忘れ物に関する保護者からの電話で忙殺される、昼の給食指導が負担といった報告や人事の回転をもう少しゆっくりとすべきだ、科目によってクラスの人数を変えられるようにしてほしいなど様々な改善策が出された。
 各グループの討議の結果報告では、最大の課題は教員が忙しすぎる点に収斂された。地域や専門家の協力を得て教員の負担を軽減できるかが、今後、立案される政策のポイントのようで、鈴木副大臣は、五月末までに議論を深めて、六月の政府の新成長戦略に盛り込み、八月の平成二十三年度概算要求で必要な予算を要求する考えを明らかにした。
 鈴木副大臣の会場での発言からすると、全国の小・中学校に三万人程度のファシリテーター(調整役)を配置し、その人物を中核に教員をサポートするチームを作り上げるようだ。ファシリテーターは教員の中から任命、授業は行わず、調整役に徹する。大学で養成するかあるいは半年程度の研修等で学校マネジメント等に必要なスキルを身につけてもらう。ファシリテーターの養成を大学で行うのか、教育委員会がその任を担うのかは定まっていない。そんな改革が進みそうだ。また現在のコミュニティースクールに関しては、地域から参加する人が地域の団体の長になるなど形骸化している傾向があり、鈴木副大臣も、「制度はニュートラルだが、実態がずれている」と話しており、見直しが必要との考えを明らかにした。今後、こうした熟議をWEBサイト等を活用してもっと多くの参加者により進めていく方針で、さらに、各地で熟議シンポジウムも開催していく計画だ。このほかテーマに関しても大学や高校の問題も取り上げる予定だが、現時点で具体的スケジュールなどは明らかにされていない。この日は、中教審の田村哲夫副会長(熟議に基づく教育政策形成の在り方に関する懇談会委員)も後半、熟議の模様を傍聴した。鈴木副大臣の求めに応じて熟議の感想を述べたが、課題設定に関しては熟議も中教審も大きな違いはなかったが、民主主義の下では、こうした手続きを踏むことが重要と語った。現在WEBサイト「熟議カケアイ」(http://jukugi.mext.go.jp/)では四月十七日から一カ月程度、「教員の資質向上」の問題で意見交換が行われている。
 鳩山政権下では、これまでの中教審中心の教育政策の検討から、教育現場の多くの人に意見を聞き、専門家の意見も参考にして政務三役が政策を決定する方式が取られている。政務三役の時間的制約などもあって教育改革論議は以前より対象が絞られているが、平成二十二年度の重点課題といわれている教員養成改革や大学改革などはなお先行き不透明な状況。


公立校学級編制等で意見聴取


 そうした中でも、今後の学級編制及び教職員定数の改善に関しては、活発にヒアリングが行われており、これまでの教育関係団体からの意見聴取に続いて、四月十九日、同二十七日、五月十二日には有識者ヒアリングが行われる。四月十九日には藤田英典・立教大学文学部教授や全国知事会の石井正弘・岡山県知事らから意見聴取。同二十七日には経済評論家の勝間和代さんやPTA団体会長から、五月十二日には小川正人・放送大学教授らから意見を聴く。この問題は熟議の課題と密接にかかわる問題。
 今後、打ち出される改革策によっては公立学校の教育現場が大きく変わる可能性もあり、私立学校への大きな影響も考えられる。

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