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記事2010年4月13日 2167号 (1面) 
文部科学省「生徒指導提要」を作成
学校・教職員向け「基本書」
組織的・体系的取り組みへ

 文部科学省は四月二日、『生徒指導提要』を取りまとめた。この提要は、小学校から高校に至るまでの生徒指導の学校・教職員向け基本書というべきもの。生徒指導の理論・考え方から実際の指導方法等について時代の変化に即して網羅的にまとめた基本書がこれまでなかった、また生徒指導の組織的・体系的取り組みが必ずしも十分に進んでいないとの指摘を受けて、昨年六月に専門家二十五人による作成協力者会議を立ち上げ、約五十人にも上る執筆協力者も加え完成させた。今後、印刷・製本を行い、全国の学校等に配布することにしている。


 生徒指導提要は約二百五十ページ。生徒指導の意義と原理に始まり教科等における生徒指導、児童生徒の心理と児童生徒理解、学校における生徒指導体制、教育相談、児童生徒全体への生徒指導の進め方、個別の課題を抱える児童生徒への指導、生徒指導に関する法制度等、学校と家庭・地域・関係機関との連携などを取り上げている。
 特に個別の課題を抱える児童生徒への指導では、暴力行為、いじめ、インターネット、性、自殺、児童虐待、家出、不登校、中途退学という問題行動ごとに対応策、教員間、他の機関との連携などの方法を紹介。
 また生徒指導に関する法制度等では、校則の根拠法令、校則の内容と運用、懲戒と体罰、出席停止などを、さらに生徒指導の進め方では守秘義務と説明責任の関係などについても解説している。いずれもわかりやすい記述が特徴といえる。
 このうち守秘義務に関しては、公務員の場合、地方公務員法第三十四条で規定しており、義務違反に対しては懲戒処分や刑事罰が加えられること、その義務は退職後も続くこと、私立学校の場合は通常、雇用契約上、就業規則・秘密保持契約などで同様の義務を課されていること、また守秘義務と情報公開・説明責任に関しては、情報公開法や情報公開条例に基づいて適法に情報を開示している限りでは、公務員としての守秘義務違反に問われることがないこと、積極的な情報提供にはそれが適切なものであれば、誤解を防ぎ、紛争の芽を摘む機能があることなどを紹介している。
 また例えば学校で刑事事件などが発生した場合、マスコミに対してもより丁寧な対応が必要となるが、提要では、重要なのは学校として守るべき利益は何かを見極め、個別の対応ではなくマスコミ全体に対して、迅速に、責任者が一元的に対応あるいは対応の場を提供すること、としている。
 児童生徒の心理と児童生徒理解の章では、現在、教育現場で大きな課題となっているLDやADHDなどの発達障害についても詳述、児童生徒の特性に応じた対応方法等を紹介している。
 児童生徒全体への指導では関係機関との連携で病院の精神科との連携の具体的事例や専門機関のスタッフと内容の一覧表なども掲載している。
 そのほか、「ラポール」、「アセスメント」、「コーピング」、「ケース会議」、「総合失調症」といった二十三のテーマを取り上げ、コラムを掲載している。

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