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記事2010年3月3日 2163号 (1面) 
公立一貫校人気に多少かげり
中高連調査
公立高校無償化の影響を懸念

 学力の重視が叫ばれる中で、公立中高一貫教育校が人気を集めているが、その人気にも少しかげりが見えてきたことなどが、日本私立中学高等学校連合会のまとめた調査結果で明らかになった。これは二月二十五日に開かれた同連合会の全国生徒収容対策会議で報告されたもの。公立中高一貫教育校には、中等教育学校、併設型、連携型の三つの形態があり、平成二十二年度段階で全国に百七十六校(都道府県立、市立)開設されている。その平均競争倍率(募集定員に対する受検者数〈あるいは志願者数〉の割合)は、平成二十二年度入試で四・一五と依然高い水準で、学校によっては十五倍近い競争倍率の学校もあるが、平成二十一年度入試の全国平均競争倍率と二十二年度を比べると、〇・二一ポイント低下しており、大半の県、大半の公立中高一貫教育校では競争倍率の低下がみられた。
 競争倍率の下げ幅は一ポイントを下回る学校が多いが、なかには七・三三ポイント(平成二十一年度競争倍率一六・二六↓二十二年度八・九三)、三・六五ポイント(同一〇・九〇↓同七・二五)といった学校も見られる。公立中高一貫教育校ながら平成二十二年度入試の競争倍率が二倍を下回る学校も二十三校あった。昨年の入試で競争倍率があまりに高くなったため、それが嫌われ競争倍率が下がったとみられる学校もあるが、競争倍率の低下が薄いながら全国に広がっているのが特徴だ。私立学校関係者は平成二十二年度から実施される公立高校の無償化(授業料不徴収)によって、公立中高一貫教育校は前期課程の三年間ばかりではなく、後期も含めた六年間、無償化するインパクトは大きいとみており、今後、じわじわと人気が高まることを懸念する声もある。
 高校無償化政策については、公立高校は無償化、私立高校は年額約十二万円が助成される(低所得者は年額二十四万円)となったが、「公立=タダ」という衝撃は大きいと多くの私立高校関係者は感じている。日私中高連が行った調査でも、「公私間の学納金格差の拡大による公立志向の増大、公立受験生増加の懸念」を挙げる私学協会は多く、また「私立の志願者・受験者の減少とそれに伴う私学経営への圧迫」を挙げる私学協会も多かった。そのほか低所得者層の私学志向の低下、公立志向の増加、公私教育のバランスある総合的発展の阻害、私学教育軽視の風潮の懸念、私立中学の生徒募集に対する影響、生徒収容における公立の収容比率拡大の危惧を挙げる意見も見られた。
 また私立高校=富裕層といったイメージが広がることで私立高校の生徒募集がより所得の高い層へシフトさせられていくことを懸念する私学関係者もいる。

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