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記事2010年3月23日 2165号 (1面) 
公私間格差問題 焦点に
高校無償化法案めぐる論議で
文科相は「私学の無償化課題多い」
7割の県は授業料軽減補助減額

 「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案」は、三月十六日、衆議院本会議で可決され、参議院に送られ、同十九日には参議院文教科学委員会に付託された。今月中には成立の見通しだが、衆議院でのおよそ一カ月間の審議では、公立高校の授業料が不徴収となったことから保護者の負担する教育費の公私間格差が大きな焦点となった。三月五日の衆議院文部科学委員会から公私間格差をめぐる審議を拾い出してみた。


 三月五日の衆議院文部科学委員会では、日本共産党の宮本岳志議員が公私間格差の問題を取り上げた。川端達夫文部科学大臣が本会議で公立高校の授業料不徴収と私立高校等への就学支援金に関して、「むしろ公私間格差は縮小すると考えている」と発言したことを取り上げ、「今も(考えに)変わりないか」と質した。
 それに対して文部科学相は、年収三百五十万円未満の世帯の生徒に関して、新たに高校等就学支援金として総額三百十八億円が国庫から支出され、加えて地方財政から二十二年度は授業料減免補助として二百六十三億円(前年度は二百九十三億円)、合計すると五百八十一億円が出されることになること、前年度、地方財政から出された二百九十三億円は大体年収五百万円未満が対象だったので、それを加えると総額で七百七十七億円となり、前年度の二百九十億三億円と比べると、所得の低い層では相当手厚い支援が行われると、格差縮小の根拠を説明した。
 ただし授業料減免補助が二十一年度の二百九十三億円から二十二年度に二百六十三億円へと減額されることに関しては、高校等就学支援金導入後、二十二年度の当初予算案で授業料減免補助の予算額を増額する県が十一あったものの、三十三県では減額となることを明らかにした。これは三月五日までに同省が状況を把握した四十五県の内訳。その中には前年度比で八四・三%も減額する県もあるという。
 また宮本議員は、年収三百五十万円から四百万円未満では京都府や岡山県のように五十万円前後の授業料等軽減を行う自治体がある一方、北海道では十四万円余と、自治体間の格差が非常に大きい点を指摘、国としてしっかりと目を配るべきではないか、私学学費もすべて無償化させるべきだと迫った。これに対して文部科学相は、高校生修学支援基金も授業料あるいはそれ以外の施設整備費の減免補助に活用できるので、そうした活用の充実を都道府県に要請していること、最終的には地方の判断で行われる状況にあること、私学の無償化に関しては、国としてどうかかわって手伝うのがいいかという今までの議論もあるので、今日の意見も踏まえながらまたいろいろと議論し、対応していきたい、と語った。
 また自由民主党の松野博一議員は、私学の無償化の問題に関する本会議での質問に対して文部科学相が「私立高校は建学の精神に基づいて特色ある教育を行っており、その自主性を尊重する必要があることにかんがみれば、私立高校について授業料の全額無償化を行い、国の関与が強まることについては課題が多いものと考えている」との発言を取り上げ、大臣の真意を質した。
 これに対して文部科学相は、「仮に国が私学の授業料を全額公的支援にすると、二十一年度の授業料でいうと、最高額が五十四万九千七百六円、最低額が二十万六千五百七十一円で、負担の公平感の問題、国が私学の授業料について高すぎるからもう少し低くならないかという関与を直接、間接強めざるを得ない状況になることを懸念すると説明した。これに対して松野議員は、就学支援金はあくまで生徒個人に対する支援なので、私学の建学の精神や自主性が損なわれることとは違う話。特に普通高校においては私立の割合を増やしていく方が行政効率がいいこと、そのためにはしっかりとした私立学校に通う生徒等々に対する助成を強めていくべきことなどを力説した。
 民主党の吉田統彦議員は、私学に対する都道府県単独の補助金額を大幅に減額したような県に対してどのように対処していくかと質した。これに対して鈴木寛文部科学副大臣は、「最終的には都道府県がいろいろな議論の中で判断することと思っているが、(県の支援拡充について)強い期待は持っている」と語った。このほかの議員も公私間格差の問題を取り上げている。高校無償化法案には、三年後見直すとの規定が修正で盛り込まれている。支援すべき人に対するしっかりとした支援を実現させるため、所得制限を設けることの是非、もちろん公私間格差の問題も見直すべき事項となりそうだ。

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