こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2010年3月23日号二ュース >> VIEW

記事2010年3月23日 2165号 (2面) 
「関心・意欲・態度」の評価で工夫推進
大枠は維持し、深化図る
児童生徒の学習評価の在り方WG
中央教育審議会 審議動向

 小・中・高校の学習指導要領改訂に合わせて学習評価の見直し作業を続けてきた中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会「児童生徒の学習評価の在り方に関するワーキンググループ」(主査=無藤隆・白梅学園大学教授)は、三月十七日、文部科学省内で最終会合(第十三回)を開き、一年に亘る審議結果を「報告案」(別途概要掲載)として取りまとめた。主査による文言等の一部修正の後、三月二十四日の初等中等教育分科会・教育課程部会合同会議の審議を経て、同省は速やかに学習評価の在り方についての考え方を各都道府県等に通知する、としているが、四月にずれ込む可能性も。指導要録の様式の参考例については、現在、同省で国が提示することのメリット、デメリットを検討しており、示されない可能性もある、という。提示される場合は通知とともに示される。昨年一月に発出された幼稚園幼児指導要録の改善に関する初等中等教育局長名の通知では、様式の参考例が示されていた。また小学校等の評価規準、現場で使いやすい資料等については国立教育政策研究所が作成するが、小学校の新学習指導要領が平成二十三年度から完全実施のため、今年夏から秋までには作成される見通し。
 今回の見直しでは、学習評価の在り方に関しては、大枠は維持しつつ深化を図ることとし、「目標に準拠した評価」(いわゆる絶対評価)による「観点別学習状況の評価」や「評定」を着実に実施すること、学習指導要領等の改正の趣旨を学習評価に反映すること、学校等の創意工夫を活かす現場主義を重視した学習評価の促進――を今後の方向性の基本としている。
 「観点別学習状況の評価」の在り方に関しては、学力の三つの要素に合わせて、基礎的・基本的な知識・技能は「知識・理解」「技能」で、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等は「思考・判断・表現」で、主体的に学習に取り組む態度は「関心・意欲・態度」でそれぞれ評価する。
 指導要録の改善に関しては、教員からこれまでに、「関心・意欲・態度」の評価や保護者への説明に対する負担感が大きいとの指摘があったことから、評価方法や評価時期等の工夫を推進する。報告案では、例えば「十分満足できる」と判断できる場合のみ記録することとするなど、評価や評定にさまざまな工夫を行うことも考えられるとの指摘があった、と記載。その場合、都道府県等の地域ごとに一定の統一性を保つことが必要としている。
 小学校の外国語活動に関しては、「総合的な学習の時間」と同様に、文章記述により評価することが適当としている。
 「目標に準拠した評価」については、地域や教員によって評価結果に違いが生じているのではとの保護者の不信をかうケースが見られたが、報告案では、各学校においては組織的・計画的な取り組みを推進し、学習評価の妥当性、信頼性等を高める努力が必要としている。同省では信頼性を高めるため、成績分布図を示すことなども可能としている。高等学校における「観点別学習状況の評価」に関しては、推進していくことが必要としながらも、各学校の生徒の特性や進路等が多様であることへの配慮も必要と指摘しており、「観点別学習状況の評価」の結果が記載すべき事項とはされていない、との現行の扱いは継続される見通しだ。ただし三月十七日の会合では、高校に観点別学習状況の評価を導入することの是非についての議論の時間が極めて少なかった、といった不満の声も出された。
 高校での「観点別学習状況の評価」実施が見送られる背景には、生徒の到達度を「高大接続テスト」によって測るとの検討が別途進んでいることへの配慮もありそうだ。
 このほか学習評価の在り方に関しては、子供と向き合う時間の確保のため、教員負担の軽減が課題の一つとなっていたが、大きな進展は見られなかった。天笠茂副主査(千葉大学教授)は、「各教科の評価が緻密化されてくると、簡素化・効率化がぼやけてくる、大切にしてほしい」と語った。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞