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記事2010年2月23日 2162号 (1面) 
衆院予算委で与野党論戦
高校無償化も焦点に
野党公私格差拡大懸念
文科相は「格差縮小を確信」と

 開会中の国会では、「政治とカネ」をめぐる問題を中心に、与野党間で激しい論戦や駆け引きが続いているが、論戦の舞台である衆議院予算委員会では、高校無償化政策による公私間の格差の問題や、学校施設の耐震化予算も焦点の一つとなっている。与野党の攻防から私立学校に関連の深い部分を拾い出してみた。


 このうち二月八日には自由民主党の下村博文議員が、「高校無償化」が公立高校と私立高校の格差を拡大、公立高校の定員増要求が急激に高まったり、私立高校の経営破たんが相次いだりする懸念等に関して政府側の見解をただした。
 この中で、高校無償化に関して下村議員は、公立高校は授業料が無償化になる一方で、私立高校生に関しては就学支援金が出されるものの、平均で二十三万五千七百五円の学費負担が残ること、就学支援金がかさ上げされるのは私立高校生の一〇%程度に過ぎず、生徒たちの立場にたつと、現在の就学支援金では私学に対するプラスのインセンティブにはなっていない点を指摘。今後、授業料のかからない公立高校の定員増要求が増えてくる問題に対する政府の対応をただした。
 これに対して川端達夫文部科学大臣は、現在でも各都道府県で総額二百九十億円の授業料減免措置等が行われていること、今回の制度で国が手当てする分が従来の分を補完する事態が起こるので、低所得者層に効果が波及すること、一部の府県で新たに今まで行っていた私学に対する奨学金や授業料軽減制度等々を拡充する動きが既に出ていることを挙げ、「公私間格差は縮小される方向になると確信している」と語った。また定員問題に関しては、公私の分担を含めてそれぞれ地方で議論いただくべきであるとの考えを示した。高校無償化法案が私学の経営を圧迫して廃校に追い込んでいく、公私間格差がかえって拡大するのではないか、との下村議員の再度の質問に対して川端大臣は、現在、七六%(の私立高校)が入学定員未充足にあり、少子化の影響を受けて私学の経営が大変厳しい状況に置かれていることも事実とした上で、「私学助成については経常費助成と同時に、地方財政措置を含めて私学が健全に経営できるようにということに対して、国として、地方としてできるだけの支援は引き続き行っていく」と説明。その上で、公立高校の無償化に伴って私立高校の経営が一気に悪化するとは思っていない、と語った。二月九日の予算委員会では社会民主党の阿部知子議員が授業料滞納により卒業が見込めない高校生が数多くいることや、学費滞納の私立高校生を支援するための基金について使い勝手に関して検討の余地があること、高校生に関しても小中学校と同様に就学援助制度を創設するべきだと語り、政府側の早め早めの対応を求めた。高校の就学援助制度を設けることについて鳩山総理は、生活保護世帯に関しては、高校でもそうした制度が設けられているが、高校は小中学校の義務教育とは異なることから、まずは奨学金を拡充して対応していく考えを明らかにした。
 一方、学校の耐震化に関しても公明党の富田茂之議員が二月九日の衆議院予算委員会で平成二十二年度予算に盛り込まれていない二千八百棟についても早急に措置する必要があることを指摘。また二月八日には自由民主党の加藤勝信議員が子ども手当に所得制限を導入すれば、公立学校の耐震化ができること、続いて自由民主党の下村議員が平成二十二年度の学校耐震化予算が麻生内閣時の平成二十二年度概算要求と比べ二十二年度政府予算案では大幅に削減されたとして、「いのちを守る」とする鳩山総理の施政方針演説との間に矛盾があると迫った。これに対して川端大臣は、当初予算の比較では公立学校耐震化関連予算は予算額も耐震化する棟数も増えていること、二十一年度補正予算で執行を停止したものは地方公共団体からの申請が見込めないものと説明した。


耐震化予算文科省はHPで補足説明


 平成二十二年度の公立学校耐震化予算については、こうした指摘があるため文部科学省では同省のホームページに補足説明を掲載した。当初予算の比較では二十一年度七百八十三億円だった公立学校耐震化関連予算は、二十二年度予算案では前年度比一六%増の九百十億円としたこと、耐震化する棟数を約千九百棟から約二千二百棟に増やしたこと、概算要求が財務省の査定後減額されることはこれまでも同様なことなどを説明している。
 二月八日の予算委員会で鳩山総理は、二兆円の景気対策枠の中で学校の耐震化についても視野に入れて措置していく考えを明らかにしている。
 鳩山政権が誕生する直前の麻生政権の概算要求では、経済危機対応等特別措置枠を利用して総額で二千七百七十五億円、五千棟の耐震化措置が要求されていた。

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