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記事2010年2月13日 2161号 (2面) 
深刻さ増すレポートコピペ問題
一橋大学でシンポ開催、明確な処分求める意見も
課題を詳細化することで減少
コピペ検出ソフトも開発

 近年大学で急増しているいわゆるコピペを使ったレポートなど、レポート剽窃問題を考えるシンポジウムが二月二日、東京・国立の一橋大学で開かれた。同大学の大学教育研究開発センターがFD研修の一環として主催。学内外から多くの教職員が参加し、関心の高さを示した。
 京都女子大学の江口聡准教授は、非常勤講師として複数の大学で教えてきた経験を基に「剽窃を未然に防ぐために」と題して講演した。
 江口氏によると、二〇〇〇年ごろからウェブ上の論文などを使ったレポートが出始め、ここ数年はウェブ情報をそのままコピペして提出する学生が続出。しかし、検索の労力、見つけた時の精神的ダメージを考えると、剽窃・不正の摘発は限界だという。
 江口氏は、一つの対策として、レポート課題を詳細にしたり条件をつけたりするとコピペがしにくくなると提案した。
 しかし、そもそもレポートの書き方や出典の付け方、パラフレーズの方法が分かっていないために、引用や言い換えができず「意図せぬ剽窃」をしてしまう場合があるという。そこで、一年生からエッセイなどの短い文章を書く練習をさせ、二年生でパラフレーズ、出典の付け方の徹底、三年生で資料探し、という順で論文の書き方を身につけさせる取り組みを全学的に進めていくことが必要だ、と指摘した。
 コピペ検出ソフト「コピペルナー」の考案者である金沢工業大学の杉光一成教授は、ソフト考案の背景について話した。「コピペルナー」は、登録した文書とネット上の文献との間でコピペチェックを行う支援ソフト。開発のきっかけは、杉光氏自身が、あるブログからのコピペレポートを複数発見し、疑心暗鬼になって検索作業に追われた経験だった。
 ソフトの導入で、検索という後ろ向きな作業時間の軽減、まじめな学生との公平などの効用が期待できるのに加え、コピペしてもばれてしまうという学生への抑止力にもつながるという。
 杉光氏はコピペの弊害として、自分の考えを表現する力のない学生が増大する恐れを指摘し「欧米では、剽窃すると即退学だと聞く。今まで日本では対策がなされてこなかった。コピペが発覚した場合は明確な処分が必要。コピペ対策は、最終的には学生のメリットになる」と話した。
 東京大学の山本泰教授は、剽窃問題には@取り締まりの問題A技法の問題B思想の問題―という三つの位相があると分析。技法の問題としては、学生が論文・レポートの書き方を知らない点を指摘し、主に新入生を対象とした東大等の取り組みを紹介した。また、思想の問題として「学問の世界には、自分と他人を切り分けるという学問の倫理があることが学生に伝わらなくてはならない」と指摘し「根拠を示す」「新しいオリジナリティー」「既知と未知の区別」という基本を教える重要性を訴えた。
 参加者からは、図書館における情報リテラシー教育の重要性を指摘する意見や、小中高での不十分な調べ学習の弊害ではないかという意見もあった。

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