こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2010年2月13日号二ュース >> VIEW

記事2010年2月13日 2161号 (4面) 
ユニーク教育 (188) ―― 順天中学・高等学校
中学で自立心、高校でアイデンティティー確立
スクールステイは自分で学ぶ生活習慣育成



 順天中学・高等学校(長塚篤夫校長、東京都北区)は、生徒が寄宿舎で共同生活する同校オリジナルプログラム「スクールステイ(School Stay)」を、平成十四年から導入している。この「スクールステイ」は「生徒たちの自主的な学習習慣や自立的な生活習慣を育成すること」(長塚校長)を目的に始められた。長塚校長は「スクールステイ」の導入に踏み切った経緯を次のように話す。
 「最近の国際比較調査によれば、日本の中高生は就寝時間や起床時間が遅く、その上、自宅での学習時間が著しく減少しています。また自分の身の回りのことを自分で行っているというようでもありません」と学習習慣や生活習慣での課題を挙げる。
 さらに、「自主性や自立心というのは、集団志向の強い日本の子供たちにとって獲得しがたい反対の特性ですが、自立心を育てるには、むしろ自立を願う友達が共にいる環境をつくる方が効果的ともいえます」と共同して学ぶことの必要性を挙げる。
 長塚校長によると、同校が創立された一八三四年ころの私塾(寺子屋)は、塾生同士が教え合う主体的・自立的な教育が行われていて、家族的な共同生活の中で、しつけや健全な成長を促す伝統的な教育が継承されていたという。
 同校は、変化する国際社会に対応して、自らを成長発達させていくクリエイティブな教育の必要を認識し、とくに中学では自立心を、そして高校ではアイデンティティーを確立するための六年間と位置づけている。「スクールステイ」は、まさに同校の教育活動の基盤となっている。
 現在、中学一年生は全員が五月から十月までの間で延べ約三十泊し、高校一年生まで学年が上がるごとに期間を短くして、新田キャンパスで実施している。一人ひとりが勝手に生活するのではない。例えば、中学一年では、学校での授業を終えてスクールバスで新田キャンパスへ向かう。放課後の自由時間の後、午後六時から七時半までで夕食、入浴を済ませた後、休憩時間を挟んで、十時三十分まで学習する。そして、反省会を行い、十一時二十分には消灯となる。
 生徒の世話は全教師が交代で当たり、食事の賄いをする専門スタッフや、卒業生のチューターも学習面などでサポートし、生徒たちと寝食を共にし相談相手にもなっている。チューターは「友達が勉強している姿に刺激を受け『自分も』という気持ちになり、『スクールステイ』を終えてからの自宅でも継続しているようです」と効果を指摘する。また、参加した中学一年生は、「友達がたくさんできた」「集中して勉強できた」「思っていたよりも時間の流れが速く感じたので驚いた」「集団生活の大切さと大変さをあらためて学べた気がする」「アイロンをかけられるようになったことがうれしい」――など感想を書いている。「スクールステイ」の成果が学校生活、学業、スポーツなどさまざまな場面で表れてきている。
 長塚校長は「『スクールステイ』中、時にはいさかいもありますが、それらを乗り越えて人間関係も深まってくるのです。また、保護者にとって『子離れ』ができるよい機会になっていることも見逃せません。『スクールステイ』は、学習内容面ということよりも、自分で学ぶ生活習慣を確立することに成果を上げています」と「スクールステイ」の成果を報告する。



記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞