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記事2010年12月13日 2190号 (1面) 
「読解力」が3年前より上昇  学校間、学校内格差は拡大
OECD「PISA」2009年調査結果
 経済協力開発機構(OECD)が二〇〇九年に実施した「生徒の学習到達度調査」(PISA)の調査結果が十二月七日に発表された。この調査は世界の七十四の国と地域が参加、このうち今回は六十五の国と地域(OECD加盟三十四国、非加盟三十一国・地域)に関して調査結果が発表された。残りは来年十二月に公表。六十五国・地域における参加者は約四十七万五千人の十五歳児で、日本からは高校一年生など約六千人(百八十五校)が試験に挑戦した。
 二〇〇九年調査は「読解力」が中心分野だったが、調査結果では我が国は全参加国・地域中八位、OECD加盟国中では五位となった。二〇〇六年に行った調査では、読解力は参加五十七国・地域中十五位だったので、文部科学省では「読解力を中心に我が国の生徒の学力は改善傾向にあると考える」と大臣のコメントを発表しているが、@トップレベルの国々と比べると下位層が多い、A読解力に関して必要な情報を見つけ出し取り出すことは得意だが、それらの関係性を理解して解釈したり、自らの知識や経験と結び付けたりすることがやや苦手。趣味で読書することはないとの生徒の割合が二〇〇〇年調査時の五五・〇%から今回は四四・二%へと減ったものの、OECD平均(三七・四%)を依然上回る状況。また二〇〇六年調査は読解力が中心分野ではなかった(そのためサンプル数が少ない)ため、大まかな傾向と認識した方がよさそうだ。
 一方、同時に行った数学的リテラシーの結果は全参加国・地域中九位(二〇〇六年は十位)で「OECD平均より高得点グループ」との位置づけで、また科学的リテラシーは全参加国・地域中五位(同六位)で「上位グループ」との位置づけ。数学、科学とも二〇〇六年調査と比べ統計的な有意差は見られなかった。
 読解力に関してはペルーやチリが大幅に得点を伸ばしたが、なおOECD平均を下回っている。韓国も読解力で二位となったが、成績上位グループが増加、成績アップは女子生徒がけん引役となっているようだ。
 今回の調査結果でも読書する生徒は世界的にも学力が高い傾向にあり、フィクションや新聞、ノンフィクションを読む生徒は学力が高い傾向で、漫画や雑誌を読む生徒は必ずしも高い傾向とは言えなかった。学習環境も学力に大きな影響を与える要因で、特に日本では教師と生徒の関係が成績を大きく左右することもわかった。また学校間格差や学校内格差が広がっていることも明らかになった。今回の調査では中国の上海が読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーで揃って一位となったが、上海が中国全体の結果ではないとOECDでは説明している。
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