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記事2010年11月13日 2187号 (1面) 
中等教育抜本見直しへ
中高一貫教育検証等で作業部会
受験競争の低年齢化招いていないか
年度内には結論、その後は小中連携検討
 平成十一年度に制度化された中高一貫教育の成果と課題の検証と改善方策の検討などを行う中央教育審議会初等中等教育分科会「学校段階間の連携・接続等に関する作業部会」の初会合が十一月十一日、文部科学省内で開かれた。来月から課題にそった審議を進め、教育団体等からのヒアリングもまじえ、平成二十二年度内に結論をまとめる予定。作業部会の主査には小川正人・放送大学教養学部教授が就任、私学関係者では中川武夫・財団法人日本私学教育研究所長や小川暢久・市川学園市川中学高校長らが参加している。

 中高一貫教育は私学では古くから実施されてきた特色ある教育の一つだが、平成九年六月の中教審第二次答申「二十一世紀を展望した我が国の教育の在り方について」で選択的導入が提言、法制化され、「中等教育学校」「併設型」「連携型」の三タイプが設けられ、中等教育学校、併設型を中心に教育課程上の特例措置が設けられた。平成二十一年三月に閣議決定された「規制改革推進のための三か年計画」では、制度導入から約十年が経過したことから成果と課題の検証と改善方策等の検討が決められた。また三か年計画の基となった「規制改革推進のための第三次答申」(平成二十年十二月)では、結果として学力を問うこととなる適性検査は行わないこと、抽選を必須としてその倍率を三倍以上とするなどが指摘された。
 中教審の平成九年の答申では受験競争の低年齢化につながることがないよう、公立学校では学力試験を行わないこととされた経緯がある。しかし私学団体の調査では公立中高一貫教育校では適性検査と称した実質的学力試験が行われている実態も明らかになっている。
 平成二十年七月、文部科学省は中教審に中高一貫教育の検討を要請していた。当初の予定よりも検証作業が遅れたのは政権交代があったため。
 十一月十一日の初会合では自己紹介を兼ねて自由に意見発表を行ったが、「中高一貫教育で本当に個性的な子供が育っているのか」、「塾で公立中高一貫校受験指導が売り物になっている」「受験倍率が二倍以内に収まるよう中高一貫校を増やす必要がある」「県教委と市町村教委の連携がうまくいかずもどかしい」「私立校では保護者の教育費負担が大きい。格差や不況で私学では新しい取り組みが出来ないでいる。文部科学省は学費負担格差が大きくならず公私が切磋琢磨できるよう支援してほしい」「人的配置で特例措置はあるか」などの意見が出された。また会議では同省が今年三月、全国の中高一貫教育校(三百七十校)や都道府県・市町村教育委員会を対象に実施した実態調査結果も公表された(近く詳報)。
 それによると、成果については「異年齢の交流による生徒の育成」「学力の定着・向上」「教職員の意識改革・指導力向上」等が指摘され、一方、課題では「生徒間の学力差」「教職員の負担増」などが指摘されていた。
 同作業部会では年度内に中高一貫教育の審議を終えた後は、委員を入れ替え小学校と中学校との連携問題、その後、優れた才能や個性を伸ばす学習機会の在り方を検討することにしている。
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