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記事2009年9月23日 2148号 (1面) 
私学関係者 文教政策の行方注視
鳩山内閣発足、補正予算を精査
最優先の「高校無償化」
課題は財源 補正では五千億円程度確保可か

 九月十六日、民主党・社民党・国民新党連立による鳩山内閣が発足。文部科学大臣に民主党の川端達夫・衆議院議員(当選八回)が就任した。党の幹事長や国対委員長等を歴任するなど実力者の一人だ。当面は、「公立高校の実質無償化・私立高校生の学費負担軽減」「大学生等向け奨学金の大幅拡充」などの公約実現が最優先課題となる。焦点は財源の捻出。これら二点の実現には約九千億円が必要で、文部科学省予算内で調達するのか、別に確保するのか、最終的には国家戦略室を中心とする閣僚委員会で決定される見通しだ。


 現在は、平成二十一年度補正予算のうち未執行額がどの程度あるのか、また都道府県に対する交付決定状況や内定状況も含めて各省庁で精査作業が行われており、鳩山総理からは十月二日までに菅副総理や藤井財務大臣、仙谷大臣、平野官房長官に報告するよう指示が出されている。
 文部科学省の坂田東一事務次官は九月七日の記者会見の中で同省の補正予算額約一兆三千億円のうち、内定までいっていない分が約四割残っていると語っており、五千億円程度は確保できる見通しを明らかにしている。
 鳩山内閣の最大の特徴と言えるのが、脱官僚依存・政治主導。そのため、文部科学省でも中川正春副大臣、鈴木寛副大臣、後藤斎大臣政務官、高井美穂大臣政務官がこれまでにも増して重要な役割を演じることになる。
 中川副大臣はかつて党の「次の内閣」の財務大臣、税制調査会顧問を務めるなどの財政通で、鈴木副大臣は同様に「次の内閣」の文部科学大臣経験者。高校無償化法案の提出者の一人で教育問題に強い関心を持っている。後藤、高井両大臣政務官も教育分野ではないが、三期にわたって議員活動を続けてきた人物。
 政治主導色が強く出されているため、文部官僚も一歩引いた形となっており、中央教育審議会などの教育改革論議は影を潜めた状態だ。中教審が「開店休業」となる可能性もある。
 民主党政権は自由民主党時代の「産物」に厳しく臨んでおり、教員免許更新制やいわゆる全国学力テストも見直し対象としている。今後はマニフェストに盛り込まれた教員免許制度の抜本的見直し、教員の養成課程の六年制化(修士)、教育委員会制度の抜本的見直し、教育行政全体を厳格に監視する「教育監査委員会」の設置などが検討されていくことになりそうだ。


戸惑う私学関係者
教育改革では懸念材料も


 こうした大きな変化に私立学校団体は戸惑っている、というのが実情だ。私学振興策がどうなるのか、当面、公立高校無償化(私立高校学費軽減)といった新しい政策が私立学校にどのような影響を及ぼすのか、判断するには材料が少なすぎる、といった状況で、文部科学省の政務三役の動向を注視している。
 高校無償化についていえば、保護者への直接助成となるのか、学校に出される間接助成になるのか、現時点でははっきり固まっているわけではない。直接、家庭に助成した場合、家計に回ってしまって確実に授業料として使われるか、不安な部分が残ることは川端文科相も指摘しており、実際義務教育学校での就学援助がパチンコ代に消えてしまった、といった実情が同省の会議で報告され、それしたことを回避する方策も検討されている。
 幼稚園の就園奨励費補助金では事務処理の関係もあって幼稚園に補助金が出され、その分幼稚園が保育料を減額するとの方式がとられており、事務を担当する幼稚園に事務費補助も出ている。
 また教育委員会制度を見直す中で公立学校と私立学校が一元行政になる恐れを指摘する私学関係者もいる。高校以下の私立学校の場合、私学の真髄である自主性、独自性を守るため、公立学校を管理監督する教育委員会とは別に、知事部局の所管とされている。
 さらに教員免許制度の抜本的見直しの中で、教員養成の開放制(文学部や工学部など教員養成学部ではない学部等の卒業者も教員免許が取れるということ)が維持されるのか、六年制養成となった場合、一般学部卒業者の教員志望者はどのような扱いとなるのか、不明の点は少なくない。
 それに関連して教員免許更新制も見直し対象となっている。同制度は平成二十一年度から本格実施となったばかりの制度。見直し対象として挙げられたこともあり、今年度の大学等が開設している教員免許更新講習参加者は低調で、財団法人日本私学教育研究所も受講申し込みの低調さに苦慮しており、採算面でも厳しい状況だ。

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