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記事2009年9月13日 2147号 (1面) 
OECDが『図表でみる教育』を公表
1995―2006年の教育支出の成長率 日本3%、英国56%、米国46%に
教育支出 私費負担に依存大
教育投資は社会・経済的効果明確

 民主党連立政権は、教育予算に関しては先進諸国並み水準であるGDPの五%以上を目指しているが、我が国の教育機関に対する公財政支出の対GDP比(全教育段階)は二〇〇六年現在、三・三%で、OECD(経済協力開発機構)加盟国でデータのある二十八カ国中二十七位(平均は四・九%)だったことが、OECDが九月八日に公表した『図表で見る教育インディケータ(二〇〇九年版)』で明らかになった。高等教育だけでは加盟国平均の半分、〇・五%で最下位だった。


 このインディケータ(指標)事業は、OECDが加盟三十カ国の協力を得て、共通の枠組みの中で比較対照できる指標を開発、各国の教育政策の形成に役立ててもらうことが目的。
 『図表でみる教育』二〇〇九年版によると、激しい知の国際競争時代等を背景に、OECD諸国は過去十年間(一九九五―二〇〇六年)公財政支出と私費負担を合わせた教育支出を増加させており、うち半数の国では教育支出の増加率がGDP増加率を上回っていた。
 この十年間の教育支出の成長率をみると、英国が五五・八%増、米国が四六・三%増、EU平均が三六・〇%増、OECD平均が三七・五%増なのに対して、我が国の教育支出の成長率は三・一%だった。また我が国は、教育支出における私費負担割合が高いのが特徴で、就学前教育ではOECD平均が一九%なのに対して我が国は五七%、高等教育ではOECD平均が二七%なのに対して我が国は六八%と倍以上の水準。私費負担には家計負担のほか、民間企業や宗教法人等からの支出が入っているが、このうち、教育支出に占める家計負担割合では、高等教育の場合、米国が三六%、英国が二七%、フランスが一〇%なのに対して我が国は五一%で、韓国の五三%と並んで際立つ高水準となっている。
 就学前教育も同様な傾向で、我が国では就学前教育と高等教育で私立学校の比率が際立って高いことが要因となっている。そのため私立学校の少ない初等中等教育の場合は、わが国の家計負担割合は主要国と大差ない状況。
 このように我が国では教育投資は低迷しているが、男子学生一人が高等教育を卒業するまでに政府はOECD平均で二万七千九百三十六ドルの投資が必要だが、高等教育卒業がもたらす経済的リターン(所得税の増加、社会保障費用の低下に伴うものなど)はその二倍以上の七万九千八百九十ドルにも達し、就学前教育についても教育の投資リターンが高いという事例がある。また今年始まった指標で、残念ながらわが国は参加していないが、例えばOECD平均で高校等の卒業で健康の度合いが一五%高まる、高等教育卒業で政治的関心度や人的信頼度がそれぞれ一七%、九%高まることも明らかになった。
 さらに高い教育を受けた人ほど失業率が低いなど教育は労働市場で安全網の役割を果たしており、教育投資は国家の経済的・社会的発展に有効な手段だと分かった。



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