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記事2009年8月3日 2144号 (1面) 
私大団体連 報告「私大における教育の質向上」発表
質保証にはPDCAサイクル重要
個性と多様な能力を持った人材の育成へ
「雑木林型教育」徹底も



 日本私立大学団体連合会(会長=白井克彦・早稲田大学総長)は七月二十二日、質向上に対する取り組みや具体的方策をまとめた報告「私立大学における教育の質向上」を発表した。
 報告は全七章から成り、内部質保証システムとしてのPDCAサイクルの重要性を強調。個性と多様な能力を持った人材を育成する私大教育「雑木林型教育」の追求、大学間学生移動の促進などを提言している。
 大学教育の質保証については、中央教育審議会が学士課程教育という概念を明確に打ち出し、各大学には積極的な取り組みが求められている。これを受け、私大団体連では、白井会長ほか委員七人で構成する「質保証の共同作業部会」を設け、審議を続けていた。
 第二章「私立大学における内部質保証システム」では、PDCAサイクルを不断に回転させることが、内部質保証システムを適切に機能させることにつながるとする。さらに、学習者のアウトカムを重視した自己点検・評価の柱として@建学の精神を強く意識しているかA教育方針・内容は現代社会の要請に応えるものかB専攻分野の専門能力がついているかC「学士力」がついているかD到達目標は適切だったか―の五つを示している。
 第三章「私立大学の学士力」と第四章「大学間の学生移動の促進」では、私立大学の使命は、各大学の設立理念に基づく学生教育にあるとし、個性と多様な能力を備えた人材を育成する私大教育を「雑木林型教育」と呼ぶ。そして、雑木林型教育の徹底こそ、二十一世紀型高等教育の目指すべきモデルであるとする。
 また、単位互換や共同教育プログラムの実施により、大学間を学生が活発に移動する「私立大学間渡り鳥制度」の促進を提言している。具体的には、全国規模で他大学の学生に授業を公開、履修させ、単位認定まで行うもの。「渡り鳥学生」に受講してもらうために、各大学が魅力あるカリキュラムを用意することで、学生による質保証も見込めるとしている。
 第六章「私学振興における国家の質の保証について」では、公財政政策の抜本的見直しの必要性にも言及。例えば、二〇〇八年度の国立大学法人に対する交付金は一校当たり百四十三億円であるのに対し、私大経常費補助金は一校当たり三億三千三百万円と、国立大学法人の四十分の一にすぎないことから、教育の質向上、「教育立国」実現に向け、公私格差のない公財政支援を求めている。

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