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記事2009年8月3日 2144号 (3面) 
インタビュー 関口修短期大学基準協会新理事長
課題は形に魂入れること
大切な評価機関同士の協力



  今年四月、短期大学基準協会の新理事長に就任された関口修・郡山女子大学短期大学部理事長に、抱負やこれからの第三者評価の方向などについてうかがった。(編集部)
   ◇
 思いもよらず理事長に選出されましたが、前理事長はじめ、多くの短期大学関係者各位が参画されている本協会の精神を引き継いで参りたいと思っております。
 評価文化というと大げさですが、日本の場合、第三者評価は始まったばかりで、評価を受ける大学の改善充実の役に立っているか否か。そして、適切に評価が行われてきたかというと、現状は評価員個々の主観が優先されている場合も多く、様々な苦情を耳にします。設置認可のアフターケアとは意味が違うのです。そのような実態は本当の第三者評価ではないのではないかと考えます。
 短期大学基準協会の役割は、各短期大学の向上充実に役立つべく、相互扶助・ピアの精神で、尽力することであり、ひいては、教育の質の向上にもつながりますし、社会への貢献ともなります。
 特に日本の場合は沖縄から北海道にいたるまで多様な文化が存在していますから、それを一元的には評価できません。日本は、大都市が中心となり、地域に対して細やかな配慮が些か欠如しているのではないでしょうか。すべて一元的にやってきたという内容は是正されるべきだと考えています。
 また、地域の持っている特性によって、その地域の短期大学は育成されています。特に地域に偏在する約三百五十余の私立短期大学が地域に貢献してきた意義は非常に大きなものがあります。
 評価に際しては、建学の精神を発揮して地域社会に貢献できる人材を育成しているかということも重要な要素です。
 平成二十二年度で加盟校すべての一クール目の評価が終わります。短期大学基準協会の基準は、みんなで作りあげたものですから、今後とも、評価基準の内容は短期大学の着実な充実に寄与する基準を作り出さねばなりません。評価基準は短期大学発展に役立つ道具でなければと考えます。
 百年の歴史を持つアメリカの評価機関でも第三者的な評価文化が生まれてくるのは、評価が始まって五十年以上経った一九六〇年代で、消費者保護の観点からの評価が行われるようになり、現在は教育成果を中心とした評価へと変化しています。アメリカのコミュニティーカレッジのなかには雨漏りがする校舎であっても、評価を得られていたし、教育の質をきちんと評価していました。
 今の日本の状況は、形は作っても魂が入っていないのではと思える状況もあります。日本でも、評価文化の精神を育てていかないと、評価の公正性、的確性が欠如してしまうのではないかと按じられますし、評価を受ける大学が納得出来る評価が鍵ではないでしょうか。そのためには評価員の研修が必要ですし、さらには評価員を務めた経験がその人のキャリアになるようなことも考えて進めていくことも大切です。
 これから短期大学基準協会以外の評価機関が短期大学の評価をされるようですが、評価校を奪い合うようなことになるのは非常に危険です。
 私たちがこれからやるべき一番大きな仕事は、評価機関の住み分けだと考えています。例えば、アメリカの高等教育評価機関は六地区に分割され、CHEA(高等教育基準認定協議会)が総合的に調整しています。これは、より質の高い教育の保証をするためです。そういう取り組みが日本でも必要です。そのためには評価機関が協力し合うことが極めて大事です。
 今後、安定的な大学や短期大学は少なくなっていくことも考えられますから、評価機関同士が力を合わせて、実態を認識し、それを国策に反映させていくことも必要です。それが教育の質の向上を生み出す方策になるのではないでしょうか。
 日本の第三者評価が適切に根付き、国際的にも模範と評価されることを願っています。

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