こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2009年7月23日号二ュース >> VIEW

記事2009年7月23日 2143号 (1面) 
職業教育に特化した学校創設提言
中教審特別部会が審議経過報告
今後は具体的制度設計へ年内にも答申

 中央教育審議会キャリア教育・職業教育特別部会(部会長=田村哲夫・渋谷教育学園理事長)は、七月十五日、文部科学省内で第十二回会合を開き、「審議経過報告」をとりまとめた。最大の焦点だった「職業教育に特化した新しい学校種」については、制度化に向け具体的検討を進めていくことを決めた。しかし「新学校種」は、大学制度の中に位置づけるのか、大学と別のものとするのか、また教育の質をどう担保するのかなど検討すべき課題は多い。今回の審議経過報告では、これまで「学校種」としていた記述は、「学校」あるいは「枠組み」「プログラム」との表現に改められている。同部会は文言の一部を修正した後、七月三十日の中教審総会に審議経過報告として提出する。


 「職業実践的な教育に特化した枠組み」については、既存の学校種(大学や短期大学、専門学校等)の中で対応できるとする意見と、その一方で大学等は教員構成やカリキュラム構成等に学術性が併せ求められるため、職業実践的な教育体制を敷きにくいなどとする意見が衝突、なかなか方向性が定まらなかったが、十二回目の会合で、「職業実践的な教育に特化した枠組み」の整備を検討する必要がある、との方向性が定まった。
 それでも夏休み明けから本格化する具体的制度設計に関しては、「既存の大学制度の中に入れるのか、その外にするのか、判断するデータが足りない」「質保証に加え全体的な制度論をきちんと立てておくべきだ」「国際的通用性を相当意識して考えるべきで、不用意に作ってはいけない」などの意見が出された。
 審議経過報告では、「職業実践的な教育に特化した枠組み」のイメージとしては、まず目的を「職業との関連性を重視した実践的な教育を通じて、実践的・創造的な職業人を育成するプログラム」としている。また教育課程に関しては、実験や実習など、職業実践的な演習型授業の割合を重視し、例えば概ね四から五割程度とし、関連分野の企業等への一定期間にわたるインターンシップの義務付け、教育課程の編成過程における社会(関連分野の企業等)との連携・対話の制度的確保。教員資格・教員構成に関しては、実務卓越性(実務知識・経験の有無、職業資格等)を有する教員を一定割合求めるなど、実務経験等を重視。進学対象者に関しては、高卒者、生涯学習にも対応、としており、修業年限は二年もしくは三年の課程、又は四年以上の課程。その他の校舎、専任教員数等の基準に関しては、大学・短期大学等における基準を基本としている。
 具体的に人材養成する分野に関しては、ハードウエア・ソフトウエアの設計・開発、デジタルコンテンツの開発、バイオテクノロジー分野におけるソフトウエアを用いた生命情報の処理などを挙げている。こうした例示に関しては、委員から「IT分野に偏っている」などの意見が出されたことから最終版の審議経過報告では、例示の仕方を工夫する。
 文部科学省の板東久美子・生涯学習政策局長は、会議の中で「制度に関しては、どう質の担保ができるか重要な問題、詳細に考えていきたい。様々な学校種、団体の意見も聞かせて頂きながら進めたい」との考えを示した。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞