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記事2009年7月13日 2142号 (3面) 
トップインタビュー 「教育はこれでよいのか」 「考える力」の育成
株式会社野村総合研究所代表取締役会長兼社長 藤沼 彰久 氏
最後は人間性が大事
歴史・古典で一般教養身につけて



 株式会社野村総合研究所は「未来社会創発企業」として、先進的なサービスの提供を経営の基本と考えている。「未来創発」とは、未来社会のパラダイムを洞察し、新しいビジネスモデルを次々と生み出そうとする姿勢を示している。同社の藤沼彰久・代表取締役会長兼社長に教育について語っていただいた。
   ◇
 ――藤沼社長は海外の大学で講演をなさる機会が多いそうですが、大学生の印象はどうですか。
 藤沼社長 当社は情報サービスとコンサルティングを業務の柱にしています。現在、中国でのソフト開発(オフショア開発と言います)に力を入れており、中国との付き合いが多くなっています。中国では清華大学(北京市)、浙江大学(杭州市)、復旦大学(上海市)などで、日本の情報サービス産業について知りたいとの要請がありましたので、業界構造や仕事の内容を中心に講演を行ったことがあります。
 そこでの大学生の印象はすごく熱心だということです。清華大学は中国全土から優秀な人材が集まってきている世界でもトップクラスの大学です。講演の後の質疑の時間には積極的に質問をしてきます。国民性の違いもあると思いますが、質問がやまない状態で、日本の大学生と比べるとバイタリティーを感じました。
 ――大学、大学院を卒業して、御社に入社してくる人たちにどのようなことを要望していますか。
 藤沼社長 私は次のことをよく話しています。@「その分野のプロになり、プロとして居続けること」、A「お客様を知ること」、B「チームワークを大事にすること」、C「健康であること」――の四つです。
 この中で、「プロでずっと居続けること」は最も大事なことです。ITの進歩は早いし、お客様も変わります。常に、最先端の技術や顧客の業界を研究しておかないと、時代に遅れをとります。五年から十年頑張るとその分野のプロになれるかもしれませんが、プロで居続けることは非常に難しいことなのです。
 ――藤沼社長ご自身、どのような姿勢で仕事に取り組まれましたか。
 藤沼社長 入社後の二十代前半には我を忘れて一生懸命仕事をしました。私はコンピュータのシステム部門に入りましたが、最初はコンピュータのことはほとんど分からない状態でした。ですから、自分で必死にコンピュータについて勉強したという経験があります。当社も最近は非常に優秀な人が入社します。でもその後の伸びは人により様々です。入社して、どれだけ勉強し成長できるかということが重要になります。
 ――企業の経営者の立場から私立学校の経営について、参考になることをお願いします。
 藤沼社長 教育というものは、人材育成のために、採算を考えないで充実させるという面があります。一方で、私立学校も学校を維持していくために経営的なことを考えなければなりません。学校の経営を維持させながら、教育の内容を充実させるというバランスを取らなければなりません。そういう意味で、病院と同じように考えられるかもしれません。病院も経営を維持させながら、(診療)内容を充実させなければならないからです。
 ――これからの学校が目指す人材について。
 藤沼社長 私は「考える力」をぜひ学校で育成してほしいと思います。必死になって勉強すれば「考える力」はつき、社会人になってから結構応用力もつくものです。
 最後は人間性が大事になってくると思いますので、生徒や学生たちには一般教養を身につけてほしいと思います。よく言われることですが、日本や世界の歴史と古典を読んで学んでほしいと思います。古典が現在までに読み継がれ生き延びてきたのは、それなりに理由があるからです。
 ――藤沼社長の生活上のモットーは。
 藤沼社長 「気は使わず、頭を使う」ということです。過去は変えられないが、未来は変えることはできると、言われます。失敗してしまったことはくよくよ悩まないことにしています。

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