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記事2009年6月13日 2139号 (1面) 
日私教研、三重県で私学経営研修会開催
「私学の未来」求め
パネル討議などで研究深める
生徒のための学校作り必要
  財団法人日本私学教育研究所(吉田晋理事長=富士見丘中学高校理事長・校長)は、六月四・五の両日、三重県鳥羽市内のホテルで平成二十一年度の私学経営研修会を開催した。私立中学高校の理事長、校長、事務長ら約八十人が参加、講演やパネル討議などを通じて「私学の未来――私学力の向上に向けて」を研究討議した。このうちパネル討議では教師のためのではなく生徒のための学校づくりや、生き残る私学ではなく感謝される私学づくりの必要性等が指摘された。(近く詳報)

 


 パネルディスカッションのパネリストは井村正勝・井村屋製菓株式会社相談役、山川喬・学校法人暁学園常務理事、清水哲雄・鷗友学園女子中学高校長の三人で、鈴木康之・水戸女子高校理事長・校長がコーディネーターを務めた。この中で井村氏は存在意義を強く求めていくことが肝要で、しかも近江商人に現代まで受け継がれている「自分によくて、相手にもよくて、世間にもいい」ことこそが大切であること、人材育成には「気づき」が大切で、本人が気づくようリードしていくことが大事とした。また私立学校は学校の特色を大いに培ってほしいし、学校の理念のもと大いに教育してほしいと強調した。
 山川氏は、常務理事になってこの二、三年に取り組んできた学校改革を報告した。私学力向上のためには教員のための学校を作るのでなく、目標を明確にし、短期に実行できることを行う、担当業務、権限を明確化し、スピーディーな決裁、決定した事項の周知徹底、全管理職による情報と責任の共有などを打ち出したという。総合学園の強みを発揮するため、分断していた学校種間の教育連携を始め、学園本部の教学部がコーディネーターを務めた。満足度調査、IT化による教育に専念できる環境づくり、的を絞った広報戦略、PDCAサイクルの実行などに務めた。大学進学ではなく、楽しく充実した学校生活の実現こそが生徒の満足度が最も高いとして、毎日通いたい学校づくりを進めている。清水氏は、論理的な思考や自己との対話などの哲学する力、他者や異文化に尊敬の念を持つことができる関係する力、創造する力などの重要性を指摘しつつ、自身で取り組んできた学校改革を報告した。
 研修会初日には、同研究所理事長を務める吉田晋・日本私立中学高等学校連合会長が私学を取り巻く最新情勢を報告した。この中で大阪府の橋下知事が検討を進めている教育バウチャー制に触れ、家庭のあり様が変容し、地域が崩壊している中で学校の教育機能への期待がますます大きくなることを考えれば、教育を担う学校への機関補助が第一優先課題、バウチャー制度の導入で年ごとに入学者数が大変動すれば学校の維持は困難になり、学校の安定性が崩れ、教育力が低下すること、社会資本の有効活用の観点からも非効率的で、子どもたちへの影響は最低限にとどめるべきだとし、教育バウチャー制の導入は「時期尚早」との考えを示した。
 また佐治晴夫・鈴鹿短期大学長が「宇宙のからくりに学ぶ――新しい教育のパラダイムを求めて」と題して講演。このほか教育制度改革をめぐる報告などが行われた。

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