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記事2009年5月3日 2136号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
社会人のリカレント教育の動向等踏まえ
必要な収容規模を審議
【大学規模・大学経営学部会】
 中央教育審議会の大学分科会に新設された「大学規模・大学経営部会」の初会合が四月二十三日、東京・千代田区の東海大学校友会館で開かれた。この部会は、大学・短期大学の規模の在り方、大学経営について今後の社会人のリカレント教育や高齢者の大学就学、大学のグローバル化等の動向も踏まえ調査審議するのが目的。大学の機能別分化を前提に当面は、(1)大学の学士課程・修士課程・博士課程の段階別に、「必要な、または妥当な」収容規模の在り方(2)健全な大学経営の確保方策(3)大学間の連携・協働の推進方策、特定分野の収容規模について審議する。
 部会長には金子元久・東京大学大学院教育学研究科教授が、副部会長には飯野正子・津田塾大学長が就任。二十一人の委員には私立大学から、飯野副部会長のほか、河田悌一・関西大学長、黒田壽二・金沢工業大学学園長・総長、佐藤弘毅・目白学園理事長・目白大学・短大部学長、佐藤東洋士・桜美林学園理事長・桜美林大学長、小川秀興・順天堂理事長、中村量一・中村学園理事長、八田英二・同志社大学長らが参加している。
 部会の冒頭、文部科学省のコ永保・高等教育局長は、先の「教育振興基本計画」作りの審議の際に大学の妥当な規模に関する議論がなかったことから、必要な公財政支出の議論ができなかったことは大きな反省点とした上で、大学・大学院・短大の量的規模、質の高い教育研究を支える経営の確立、国際化、留学生、社会人入学の面も含めて大学が一定の人材養成を行っていくこと、大学の機能別分化の促進を前提に、大学の自主的統合、再編を速やかに促していく方策等を検討してほしい、と要請した。
 金子部会長は、今後、議論を、(1)マクロ(産業分野別、地域別、年齢別量的規模等)(2)メゾ(定員収容率にバラつきに合わせた補助金や規制の在り方、機能別分化等)(3)ミクロ(大学間の問題・連携、学生受け入れ困難校への手当て等)の三つに整理していく考えを明らかにした。委員からは、「大学入学者の年齢が日本では十八歳、十九歳になぜ集中しているか、その原因を考えるべきだ。大学が様々な年齢層を受け入れると、大学の性格も変わっていく」と社会人学生の増加に期待する意見が出された一方で、「地方の大学では社会人受け入れはゼロに近い」など地域的に社会人学生の増加は期待できないとする意見も聞かれた。
 また教育の格差が経済格差を生んでいることから、経済的に恵まれず不安定な雇用を余儀なくされている人達に国が予算を付けて高等教育の機会を提供することは意味がある、とする意見や、就学人口が減少していることに合わせて、臨時定員減の検討を求める意見、大学の規模については労働市場のニーズと日本の発展・世界への貢献に必要な規模の両面から検討すべきだとする意見などが出された。同部会では事例の収集や外国事情の調査などのため、二つのワーキンググループを新設する。次回は五月末。
 大学の機能別分化に関しては、中教審が平成十七年の答申の中で、大学が有する機能を、(1)世界的研究・教育拠点(2)高度専門職業人養成(3)幅広い職業人養成(4)総合的教養教育(5)特定の専門的分野(芸術、体育等)の教育・研究(6)地域の生涯学習機会の拠点(7)社会的貢献機能(地域貢献、産学官連携、国際交流等)の七つに整理し、各大学は自主的・自律性を前提としながら、個性化・特色化を推進し、総体として我が国の大学の多様性を確保する必要性を指摘していた。
 大学分科会では、引き続きその分類の在り方や公的質保証システムと関連する公財政支援などを検討していく。
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