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記事2009年5月23日 2137号 (2面) 
親の行動等が子の学力左右
教師との良好さも重要
お茶の水女子大学・ベネッセが調査報告

 お茶の水女子大学とベネッセ教育研究開発センターは、このほど、「教育格差の発生・解消に関する調査研究報告」をまとめ、公表した。この報告書は、同大学が文部科学省の委託を受け平成十八・十九年度に実施した研究のうち、十九年度調査を中心に、委託期間が終了後、両者が研究成果を整理し直し、分析を補いまとめたもの。
 この調査は、学力格差発生のメカニズムを明らかにし、学力格差是正方策を提言するのが目的。二〇〇七年十一月から二〇〇八年二月にかけて三期にわたり調査を実施した。調査対象は大都市圏、地方都市、郡部の公立小学校五年生児童約三千人とその保護者、児童の担任、校長百四十人。
 報告書によると、国語、算数とも成績上位層の保護者の方が、「本(雑誌や漫画を除く)を読む」「美術館や美術の展覧会に行く」「新聞の政治経済欄を読む」「パソコンでメールをする」「クラシック音楽のコンサートに行く」「テレビのニュース番組を見る」「政治経済や社会問題に関する情報をインターネットでチェックする」などをよくする傾向にあった。
 一方、成績下位層の保護者の方が「テレビのワイドショーやバラエティー番組を見る」「スポーツ新聞や女性週刊誌を読む」「カラオケに行く」傾向が強かった。
 成績の上位層と下位層との間で最も大きな差が見られたのは、国語の学力では、保護者の「美術館や美術の展覧会に行く」で一四・一ポイントの差、次いで「新聞の政治経済欄を読む」で一三・八ポイントの差が見られた。算数では保護者の「本(雑誌や漫画を除く)を読む」をよくするあるいは時々するか、しないかで一二・〇%の学力差が生じていた。
 また保護者の子供への働きかけや「ニュースや新聞記事について子供と話す」など家庭環境が子供の学力にとって重要な要因となっていることも分かった。
 テレビゲームに関しては、持ってないも含め高学歴な母親ほどテレビゲームを制限している傾向にあることも明らかになった。
 しかし不利な環境にある子供たちでも学力の向上に成功している学校がある。効果を上げている学校と、そうではない学校とでは何が違うのか。両者間で大きな違いとして見られたのが、教師と児童との良好な関係で、児童の「先生は私の気持ちを分かってくれている」といった教師への信頼感の高さが、学習集団のポジティブな雰囲気をつくり、子供たちの学習習慣を着実なものとし、更なる学習意欲を喚起しているようだ、と報告書は分析している。

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