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記事2009年5月23日 2137号 (2面) 
どうなる教育―教育改革の動向
キャリア教育を充実
学校、教員の在り方も議論

 文部科学省の中央教育審議会(文部科学大臣の諮問機関)や政府の教育再生懇談会等による教育改革は、ここ十年を見ただけでも途切れることなく続いている。教育内容の面では新学習指導要領の改訂が最も顕著だ。
 改革の背骨ともいえるのが質の向上だろう。
 いわゆるゆとり教育のねらいが学校現場に定着せず、我が国の子どもの学力水準に翳りが見えたことや、国際的な学力の動向への対応も睨んで今回の改訂を行った文部省では、知識・技能の習得とともに、思考力・判断力・表現力等の育成の重視など学習の質を一部改めたほか、理数教科や英語を中心に授業時数の増加による学力定着・アップを目指している。
 学習指導要領が変わったことで、学校がつける指導要録(児童生徒の学習等の記録)の標準様式も改められる予定で、検討を進めている中教審の教育課程部会では年内に検討結果をまとめることにしている。
 またキャリア教育・職業教育も重要課題として審議中だ。七月にも中間報告がまとめられる見通し。高校や大学を卒業後、就職するも長く続かない、最初からフリーター志向(最近では不況で正規採用の道が狭まっているとの問題もある)など職業生活への接続がうまくいっていないことから、小学校から高校にかけて、様々な職業体験や社会体験などを通じて早い段階から自らの将来を考えられる子どもに育ってほしいとの願いから、現在、そのために何をどう教えるべきかなどが議論されている。また志願者が減少している高校の専門学科(工業科や看護科など)の卒業生は普通科卒業者より離職率が低いなどから、職業教育の意義を再確認して、専門高校の振興を図ろうという方策も検討されている。高校看護科のように卒業後に設けられている専攻科(二年)を修了した場合、大学三年次への編入学を認めるべきだとの意見も多く、専門高校から高等教育に進学できるチャンスを増やす方向で議論が進んでいる。
 教員が多忙を極める中で学校や教員の在り方の検討も進められている。子どもたちの学力を向上させるためには、教員の子どもたちと向き合う時間を増やそう、との考えから、学校の守備範囲≠站ウ員の職務内容、事務職員、外部のボランティア等との役割分担等を話し合っている。議論は公立学校を対象としたものだが、私立学校への影響も少なくなく、教員の事務負担軽減や部活動の負担軽減(部活動の時間的制約)といった議論も行われている。
 このほか「学校評価」に関しては、学校自身の自己評価は義務化されたが、今月から第三者評価のためのガイドライン作りの議論が再開された。第三者評価に関しては、学校の運営等について教員や保護者ではなく、第三者(専門家)による評価で、始まったばかりの調査研究協力者会議では費用負担、評価員の確保など多くの課題が指摘され、ガイドラインを設けること自体に疑問を投げかける委員も見られたが、七月中にはガイドラインの試案をまとめ、年度内に百六十五校で実施検証、来年三月にはガイドラインを決定する。公立を念頭に置いたものだが、質の保証、社会への説明責任ということを考えると将来的には大学のように、義務化が予想される。
 私学がはじめた中高一貫教育が今や公立学校でも広がりを見せているが、小中一貫教育、中高一貫の再検証など学校の接続問題も今後検討される見通しだ。高校と大学の接続という点では、学力試験のないAO入試が拡大したこともあって、大学入学段階での受験生の質保証の観点から高大接続テスト導入が検討され、高校関係者は高校生に新たな負担をかけるものなどとして導入に反対している。

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