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記事2009年3月3日 2129号 (2面) 
全国専門学校情報教育協会 専修学校フォーラム2009開催
パネルディスカッション
これからの専門学校を考える
明確な人材像の教育課程重要 資格取得偏重に懸念も
 全国専門学校情報教育協会(理事長=吉田松雄・学校法人吉田学園理事長)は、「これからの専門学校を考える」をテーマに平成二十年度「専修学校フォーラム二〇〇九」を、二月二十四、二十五日の二日間、東京・中野の中野サンプラザで開催し、講演やパネルディスカッション、分科会が行われた。

 専門学校の一条校化が話題になっているなか、同協会の調査委員会(芦田宏直委員長)は「これからの専門学校」と教職員研修アンケートについて報告を行った。その中で専門学校の「一条校化」とは何かを取り上げ、高等教育のもう一つの柱となるには質の保証をどう行うか、組織としての公共性・信頼性をいかに確保するか、第三者評価や専任教員をいかに確保するかが課題であること、就職の品質が悪いのは教育の質が低いからではないか、などの問題が提起されていた。
 また「これからの専門学校を考える」をテーマに行われたパネルディスカッションでは職業学校の教員像などが話し合われた。パネリストには鳥居高之・船橋情報ビジネス専門学校長、古賀稔邦・日本電子専門学校長、小西祐司・上田安子服飾専門学校教務部長、山田研・辻調理師専門学校教育本部長が参加、コーディネーターは芦田委員長が務めた。各パネリストの意見は次のようなものであった。(文中敬称略)
 芦田 専門学校の教育について、あれもこれもやっていて、一条校化したら問題になるのはカリキュラムだという反省がある。明確な人材像を持ったカリキュラムになっていないし、資格に縛られたカリキュラムになっているのではないか。
 鳥居 うちはやはり資格を取ることと就職中心にやっている。しかし、中心に据えているのは人間教育だ。教育のこれからの方向性としては、やはり就職の質を上げていくことだ。就職の質を上げるためには当然教育の中身が変わっていくだろう。専門学校生は得手なものに集中して学習するのが得意なので、一点突破型の教育を作りたい。企業から胸や知恵を借りるため動き始めている。
 古賀 それぞれの学科が教員の質を高めていかなくてはいけない。改革にあたって、産業界のニーズに応えていくことが一番の課題だ。そのため、卒業生のいる企業に行って、現場の技術者に会い、カリキュラムを見せて具体的意見をもらっているところだ。
 山田 調理師養成では、カリキュラムでやらなくてはいけないことが規定されているので、ある程度のレベルに達するために二年制化した。一年制から二年制に変わって卒業生の就職先が高度化したかどうか注視したが、一年制の時とあまり変わらなかった。これは結構ショックだった。
 小西 株式会社立の競合校は、高度化したカリキュラム構成で、学生は三分の一しか卒業しない。競合校の学生に就職で押されている。パーソナリティーで判断されて負けているのではないかと思う。うちは現在三年制のカリキュラムを敷いており、メンズ服のコース、レディース服のコース、キッズ服のコースがあり、メンズ服のコースの学生にもレディースを教えている。就職の間口を広げるためだ。
 芦田 職業教育の教員はどんな人がやればいいのか、見聞きした限り誰も答えてくれない。しかし、十八歳で職業を選択して専門学校に来た学生に、一生をかけるに値する深みと高さを体験させてくれるカリキュラムでなくてはいけないし、そういう教員でなければいけない。事実上のキャリアパスを体現できるような教員体制を構築しようとしているだろうか。
 古賀 非常に難しい問題だ。現場の技術を教えている教員は元現場にいた人という自己矛盾がある。技術革新の速いITを学生に教えるには企業の人に非常勤で来てもらうような形になるのかもしれない。
 芦田 教員についてあまり考えられていないのは、資格取得教育になっているからではないか。人材教育をどう高度化していくかという職業教育観が消えてしまっている。これでは改革につながらない。
 古賀 その問題は大事だ。資格教育機関が高等教育機関なのか疑問だ。
 鳥居 教員はインストラクターからコーディネーターに脱皮してほしい。IT分野の新しい技術を学生に教えなくてはいけないとき、教師はどんな現場の人を学校に連れてくるかというコーディネーター的役割を果たす必要があり、自分のところはそういう教師が数人いるという方向を目指している。資格については学生にとって目標なのでそれも必要だ。
 芦田 教育の質を高めることで資格依存の科目を減らしていくことだ。質の高い高等教育のためのカリキュラム開発と教員マネジメントが非常に大事だ。
 山田 教員にも学生にも技術指標(技術プラス知識)が明確にはない。それをやらないと共通言語が生まれない。ホテルへの就職の場合でも、人事と厨房では受け入れ方が違う。人事と厨房の両者の矛盾を埋める技術指標を作りたい。そうでないとFDができない。
 小西 うちも職人技の伝承という部分が色濃く残っており、山田先生のいわれる技術指標を出していくことが急務だと考えている。
 芦田 課題は、学生を教育して、資格・偏差値に代わる明確な指標で表現する方法を作っていかなくてはいけないことだ。しかし、今の厳しい経営環境のなかで、誰がそれをやるのかが専門学校の大きな課題だ。
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