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記事2009年3月23日 2131号 (1面) 
麻生総理 経済危機克服で有識者会合
安西慶應義塾長ら出席
教育格差問題解決など要請
経済危機克服を目指して、麻生総理大臣が今後の経済財政運営の在り方について各界代表の有識者から意見を聞く「有識者会合」が三月十六日、総理官邸で始まったが、同十八日には教育等をテーマにした会合が開かれ、安西祐一郎・慶應義塾長、白井克彦・早稲田大学総長ら八人が意見発表を行った。この中で安西塾長は教育無格差立国など四つの立国の必要性を、白井総長は教育研究上の基礎的インフラの充実、留学生・低所得世帯のための就学支援拡充などの重要性を強調した。

 この日、教育等分野で意見発表したのはそのほか荒瀬克己・京都市立堀川高校長、黒田玲子・東京大学大学院総合文化研究科教授、近藤駿介・原子力委員会委員長、榊原定征・東レ株式会社代表取締役社長、野依良治・独立行政法人理化学研究所理事長、吉川弘之・独立行政法人産業科学技術総合研究所理事長。
 この中で安西塾長は、社会人がもう一度大学で学び直して環境エネルギーや介護、農業関連といった新しい知識を身に付け新しい職に就けるようなサイクルを作る政策を要請。英米では大学学部入学者の約二〇%以上が二十五歳以上にもかかわらず、日本は二・七%に過ぎないとし、社会人の教育費負担軽減のための措置の重要性を指摘。
 また所得格差が学歴格差を生んでいることを指摘、特に経済困窮家庭の子供は四年制大学への進学予定が極めて低く、進学しても学費の高い私大に行かざるを得ない現状を打破して活気のある高等教育の世界を作ることは、小規模校を含め全国各地域の経済振興につながる点を強調した。
 さらに緊急措置として私大生の学費減免の学校側負担分等を国庫から補助(例えば生活保護家庭と年収四百万円以下)を要請した。そのほか情報経済立国、医療安心立国の必要性を指摘した。
 白井早大総長は、大学を中心に研究基盤を思い切って充実すること、研究を支援していく人材配置(日本では遅れている)、データセンターなど今後大きく役に立つIT投資を求めた。さらに私費外国人留学生のうち、今回の世界的経済危機から授業料を納められない人が私学だけでも約二千人にも上る見通しで、要生活保護世帯から来ている学生が大学、短大で約五万人、それに準ずる世帯の学生は約十四万人を数えることなどを指摘、そうした人たちの教育への積極的投資を促した。このほか榊原東レ社長はエネルギーを自給し、省エネルギー、防災対策に優れ、理科教育を充実させたグリーンスクール構想を、荒瀬校長は、自校の経験をもとに、研究開発指定による学校活性化策、キャリア教育コーディネーターの養成などを提案した。
 野依理事長は、質の高い大学院生、若手研究者・技術者の確保、高等教育システムの抜本的強化、積極的な公的資金投入などを要請した。
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