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記事2009年3月23日 2131号 (1面) 
OECD わが国の高等教育政策評価
トーマス・ウェコー氏が報告
 経済協力開発機構(OECD)は三月九日、『日本の高度教育政策レビュー』を公表したが、日本の高等教育評価のまとめ役を務めたトーマス・ウェコー(Thomas Weko)・米国教育省国立教育統計センター中等後教育部門次長(元OECD教育部)が来日、三月十日、都内で開かれた東北大学高等教育国際セミナーの中で日本の高等教育政策の評価結果を報告した。同レビューは、文部科学省の作成した広範な背景文書と、平成十八年五月に行われた十日間の訪日調査に基づいて作成された。英国、米国、ノルウェーの大学副学長や教授ら五人が評価を担当した。
 平成十六年四月に行われた国立大学の法人化で国立大学の自立性が強化されたことを受けて、二年後の平成十八年に組織的な構造や質の保証、労働市場との関係などを調べた。そのため同レビューは国立大学法人を念頭に置いたもので、報告会で私立大学についての評価はほとんどなかった。
 ウェコー氏は、報告の中で、日本に限らずフンボルト型大学からの脱却が世界的潮流で、国家機関から法人への移行が広範に進んでいること、政府側も大学の大きな自治実現へ変革を迫られているものの、日本では文部科学省の大学の管理運営に対する影響力が大きく、大学が独自に資金調達のために債券発行ができない、授業料を独自に決定できないことなどは問題で、六年間の中期目標設定でも、現実の計画と文部科学省向けの計画の二つを持っていた大学があったことや任期制の教員が全体の六%に過ぎなかったことなどを指摘。文科省は戦略的なマネジメントに向けて六年間のスキームの見直しが必要だとした。また大学マネジメントの専門的な能力を持った職員養成の必要性や高等教育に対する公財政支出割合(対GDP比)が低く、世界のリーダとしては心もとない額だとも語った。
 授業料が卒業後に得られる所得や教育に要する経費の水準を反映していないこと、大学の収入源が限られ多様性に欠けていることは、大学の戦略性を高め、自治・自立のためには障害となっていることなどを力説した

日本の高等教育政策について報告するウェコー氏

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