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記事2009年3月23日 2131号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
大学の質保証の在り方を討議
設置認可審査、抜本的に再検討へ
【大学分科会】
 中央教育審議会の大学分科会(安西祐一郎分科会長=慶應義塾長)は、三月十日、東京・霞が関の文部科学省で第七十七回会合を開催した。中心議題は、大学の質保証に関して。最初に事務局から、大学の質保証システムの現状と課題について以下のような説明が行われた。質保証には三つの要素として、最低基準を定める「設置基準」、最低基準の担保のための「設置認可審査」、設置後の確認のための「認証評価」があり、この関係性における課題を検討すべきであること。
 このうち設置基準と設置認可審査の関係における課題は、現行の設置基準には定性的基準も多くかつ大学としての要件が必ずしも明文化されていないなどにより、設置認可審査で苦慮する事例が多数生じていることなどだ。このため検討課題としては、現行の設置基準に、何をどこまで規定すべきか、定性的な部分をどこまで定量化すべきか、また認可審査が書面審査中心となっていることから認可後の確認をどうするか、など。
 設置認可審査と認証評価の関係における課題は、現状の認証評価が機関評価のみであること、認証評価が事後評価であるなら設置認可審査とそのアフターケアが必ずしも認証評価に引き継がれていないことがある。このため、検討課題としては、分野別評価の導入についてどのように考えるか、アフターケア終了後の設置基準の適合性の確認をどうするか、大学による自主的・自律的な質保証を十分に機能させるための仕組みの検討、などであるなどと事務局から報告された。
 また、質保証に関して、諸外国の例が示され、イギリスでは近年、大学の活動に関するガイドライン整備が進んでいる、などと紹介された。
 委員からの意見では、設置基準について、「従来、大学人として常識的に行われてきたことを明文化するべきだ」「時代は大きく変わっており細かいところを直すべきだ」「設置者が違う場合も同じ土俵で審査できるようなルール作りが必要だ」「届け出制となって一〜二年で修正・乗り換えが横行している。可能な限り明文化すべきだ」などの意見があった。
 認証評価については、「設置基準が変われば認証評価も当然変わらざるを得ないだろう」「はっきりした基準がないため、評価する側も評価される側も苦労している」「高度研究・高度教育を評価するというが、それも決めないと分からない」などの意見があった。
 事務局からは、アメリカでは学位発行に対しての質保証となっている、文部科学省として自律的な質保証の試みにどう公財政支援をしていくかだ、などと述べた。
 安西分科会長は、設置基準については、緩やかになったために最低基準のところで設置認可せざるを得ず質の保証ができない、また、評価については大きな大学は専攻分野別に見る必要がある、今ある大学の質の保証には認証評価が効果的なのでこれを質保証システム部会で審議する、設置認可審査については設置審議会との連携・連絡が必要だが抜本的にやらなくてはならないだろう、などと述べた。
 最後に事務局から、経済協力開発機構(OECD)が高等教育における学習成果の評価(AHELO)についてフィージビリティー・スタディー(試行的試験を行い、本格的な実施の可能性を明らかにすること)を実施するが、日本は工学分野で参加するため、今後、工学分野の専門的な調査研究を実施することが報告された。
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