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記事2009年3月23日 2131号 (2面) 
超過勤務等の扱い集中審議
教員の自発性・創造性に配慮し管理方策など検討
【教職調整額等の見直し等作業部会】
 中央教育審議会初等中等教育分科会「学校・教職員の在り方及び教職調整額の見直し等に関する作業部会」(小川正人主査=放送大学教授)は、三月十六日、文部科学省内で八回目となる会合を開き、教職調整額について集中審議を行った。
 この日は、初めに同省から、教職調整額の根拠となっている「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」が昭和四十六年に制定された背景や制定までの経緯が説明され、その上で同省が時間外勤務手当て化に係る各論点・課題とその考え方・解決方策を整理した文書が示され、その論点等にそって議論が行われた。
 同省の説明によると、昭和二十三年の公務員給与改革で教員については、勤務の特殊性から一般の公務員より一割程度高い俸給を支給するかわりに、超過勤務手当ては支給せず、同省も超過勤務を命じないよう指導することになった。
 しかし、昭和三十二年に公務員の給与体系が等級別に移って以降は、従前あった教員の有利性が薄れ、超過勤務の実態から超勤訴訟が全国一斉に提起され、最高裁から「時間外勤務手当ての支給を拒むことができない」との判断が示されたことなどから、昭和四十六年、人事院の意見申し出を受け、同省は教員の勤務時間内外を区別せず、包括的に評価する教職調整額を支給することで超過勤務手当て制度を適用しないという、いわゆる「給特法」を国会に提出、五月に成立したこと。その後、昭和四十九年には「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」が制定され、教員給与の改善が実現したこと。
 しかし学校に求められる教育内容の広がり等に加えて、部活動の指導や生徒指導、保護者への対応などから教員の時間外勤務が増大したことは、メリハリのある給与体系への移行とともに課題となっており、その改善策が求められている。
 こうした背景のもとで、同省は、▽組織的、計画的な学校運営を行う中で、教員の自発性や創造性に配慮しつつ管理職が教員に時間外勤務を命令し、承認する際、あるいは教員の時間外勤務の終了後に管理職が実際の時間数や勤務内容を把握する際にどのような配慮・工夫が考えられるか▽管理職が教員の勤務時間管理によって負担が増えないようにするための方策▽授業準備などについて適切に時間管理する方策▽時間外勤務を抑制しようとするあまり教育の質の低下を招かないようにする方策――を課題として指摘、検討を求めた。
 同省のこうした方向性は、時間外勤務手当て導入の意向を示すものとみることもできるが、作業部会では改善の方向性が定まったわけではなく、時間外勤務の縮小と教員の勤務時間管理の必要性については委員の異論はないものの、委員の意見は実にさまざま。
 「教員の自発性・創造性にかかわる業務(授業や教材研究等)については教職調整額で包括的に、学校運営関係の業務では超過勤務手当てでという併用制にすべき」「すべて時間外勤務手当てに切り替えるには教員間でコンセンサスが必要。それがないと大混乱する」「勤務時間と賃金は切り離して考えるべき。今の調整額(の水準)が妥当かは議論の余地があるが、教職調整額の考えは合理的」「学校が組織的であるべきならば、校務分掌で標準作業時間を積み重ねていくべき」「時間外勤務は健康面から考えて減らしていくべきで、なくなる方法を考えるべきだ」「教職調整額に業績評価を加えた併用制に。教育委員会や事務職に一部業務を移管して教員の負担軽減を」「部活動や夜間の生徒指導等は出動手当て≠フように丸めた形で支給することもできる」といった意見が聞かれた。
 次回会合では、教職調整額についてさらに具体的に検討していく予定。
 同作業部会は、発足当初の計画では、今年三月ごろに中間とりまとめを行う予定で、その後、関係団体から意見聴取を行うことにしていた。夏ごろには中教審としての答申がまとめられる予定となっている。
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