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記事2009年2月13日 2127号 (1面) 
第5期中央教育審議会が始動
新会長に三村明夫経団連副会長
人間力と世界一流人材育成重要
 第五期中央教育審議会の初の総会が二月十日、文部科学省内で開かれた。会長には社団法人日本経済団体連合会副会長の三村明夫・新日本製鐵株式會社代表取締役会長が、副会長には梶田叡一・兵庫教育大学長と田村哲夫・渋谷教育学園理事長が就任した。委員は三十人。約三分の二の委員は四期に次ぐ続投。三村会長は総会後の記者会見で、人々の意欲、自立心、人間力をいかに作り上げるか、またトップランナーとして世界の一流の誇れる人材をどう作っていくかが重要と語った。

 第五期中教審の当面の審議事項は、四期からの継続審議案件である、(1)今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(2)小・中学校の設置・運営の在り方、学校・教職員の在り方及び教職調整額の見直し等について(3)中長期的な大学教育の在り方について(4)新しい時代に求められる青少年教育の在り方について、の四点。
 このうちキャリア教育・職業教育に関しては、高校における職業教育の在り方、高等教育への接続などが審議される見通しで、高等教育では専修学校関係者が求めている職業教育に特化した高等教育機関の創設が大きな焦点となる。小学校・中学校の設置・運営の在り方に関しては、小学校・中学校の教育連携や、子供と向き合う時間を確保する観点から教員の職務の在り方、業務のアウトソーシング、超過勤務手当てのあり方など学校の基本的な在り方が検討される。小中連携に関しては、公立学校内での児童生徒の囲い込みとなり、私立中高一貫教育にとっては大きな打撃の可能性もある。
 中長期的な大学教育のあり方に関しては、グローバル化が進展する中で、大学の教育や研究の国際的な質確保が今まで以上に求められてくることから、教育内容のプログラム化、学生の厳格な成績評価、英語による講義の拡大など大学や学生に大きな変革を迫ることになりそうだ。また就学人口が減少する中で高等教育機関の得意分野を活かしての連携、規模の適正化、適正配置、設置基準の厳格化などが審議されることになる。青少年教育に関しては、その意義や国・地方・民間の役割分担、連携等が審議される。
 こうした課題を考慮して、委員には新たに小中一貫教育を行っている公立中学校長や東京・大田区の町工場の経営者も参加している。
 総会の中では就任した委員がそれぞれ諮問事項や現在の教育に対する問題意識など語ったが、「公教育と私教育を分けて議論すべきだ。そうでないと混乱する」「審議会はストレートにものが言える場にしてほしい。教育にとって正念場だ」などの意見が聞かれた。
 また塩谷立・文部科学大臣は、「経済情勢を考えると、こんな時こそ教育が大事。日本には人以外資源がない。官邸(教育再生懇談会)の論議と文部科学省(中央教育審議会)の論議をうまくかみ合わせていきたい」と語った。


三村中教審会長の発言要旨

 三村会長の記者会見での発言要旨は次の通り。
 教育振興基本計画では予算が争点だった。出来る限り数値を織り込んだ。教育は必ずしも数値化できるものではない。PDCAを回していくしかない。人々のやる気、意欲、自立、人間力をいかに作り上げていくか、世界の一流の誇れる人材をどう育てトップランナーとしていくかの二つが大事。日本の教育の多くは献身的な先生に支えられている。非常に忙しい、教師を増やしてとの要望もあるが、国の現状を考えると簡単に応えられないのも事実。ドラスティックに変えることは難しいが、その中でどうやるのか、苦情をどう吸い上げるかが問題。長い不況は来るが、必ず出口ある。経済情勢にかかわらず解決できる教育問題も多々ある。経済界としては教育問題にもっと取り組みたいと考えている。経済界のOBも活用し社会のニーズとマッチングさせて学校の要望が実現できるようにしたい。こういう経済情勢だが、日本をどのような形で成長させるのか、考えるいいタイミングだ。「人材力」をどう高めるか大切な局面だ。
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