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記事2009年12月3日 2155号 (2面) 
私立短大の挑戦 (8) ―― 目白大学短期大学部
都の離職者向け介護福祉士養成機関に
社会人本科生 18歳学生へ大きな刺激

 短期大学士課程、専攻科の充実と並んで、日本私立短期大学協会の提言書「短期大学教育の再構築を目指して」では短期大学が目指すべき方向の一つとしてコミュニティーカレッジの役割を担うことが挙げられているが、それが少しずつ動き始めた。
 雇用の悪化や介護分野の慢性的な人手不足から、離職者を再教育して介護分野へ振り向けようと、国・地方自治体が養成機関に委託して人材養成に取り組み始めている。
 東京都でも産業労働局雇用就業部能力開発課が離職者の介護福祉士養成委託先を募集。委託期間は一年ごとの更新で二年間。これに目白大学短期大学部(佐藤弘毅理事長・学長、東京・新宿区)が手を挙げた。選考の結果、十五の養成機関が選ばれたが、そのうち十四校は専門学校、短期大学は目白大学短期大学部一校のみだった。
 その理由を同短大部側は、急な募集であったため、他短大は準備が間に合わなかったのではないかと言う。
 同短大部でも大急ぎで書類を整え提出した。特別プログラムなどは新設せず、既存の生活科学科生活福祉コース(二年課程)に本科生としてそのまま受け入れることにした。それが採択につながったと考えている。社会人本科生の授業料は公費負担で、本人には雇用保険からの失業給付も行われる。
 そして、今年四月、二十代から五十代までの離職女性(以下、社会人本科生)二十七人が入学してきた。
 介護福祉士の資格を取るためには、厚生労働省が定めたカリキュラムを履修する必要があるのはもちろんだが、本科生である以上、同短大部で設置している基礎教育科目である保健体育や日本語表現、情報活用演習、社会福祉概論が必修として課される。専門科目では、医学入門、老人福祉論、障害者福祉論、社会福祉援助技術講義、介護概論、介護技術、リハビリテーション論、生命科学と倫理学、認知症ケア学などの授業が設置されており、実習も学内・学外合わせて、卒業までに四百五十時間が必要と、かなりハードなカリキュラムである。
 社会人本科生は行事にも参加する。四月に実施された二泊三日のフレッシュマンセミナーでは、若い一年生と「助け合って、みんなで卒業する」というスローガンを掲げた。六月のスポーツフェスティバル、七月の七夕祭、十月の桐和祭(学園祭)にも参加した。
 同短大部を選んだ理由について社会人本科生の一人は「緑豊かなキャンパスで学生生活を楽しみながら、資格取得と同時に教養科目も学べると思ったから」と話す。実際、図書館や学生食堂などを若い学生に交じって利用し、キャンパスライフを楽しんでいる。
 一方、十八歳の学生たちにとっても、熱心に勉強する社会人本科生の姿は大きな刺激となっている。実習ではパートナーを組むこともあり、社会を経験した人ならではの心配りに学ぶことも多い。教員側も生活体験に基づくリアリティーある疑問になるほどと納得することもしばしばという。
 取材した日の授業は必修の「介護過程T」。受講しているのは大半が社会人本科生であった。
 授業では、介護施設に入所している人へ言葉かけをする際の注意として、それぞれ事情があり介護される側一人ひとりの思いに配慮すること、介護にあたって思い込みを排除すること、体調を見る際は事実を見ることが重要であることなど、例を挙げて繰り返し説明されていた。
 十一月現在、入学した二十七人のうち二十五人が元気に授業を受けている。社会人本科生の出席状況は月ごとに東京都に報告することとなっており、同短大部では、東京都と連携をとりながら、ハードな学習を助け、全員が卒業し介護福祉士の国家資格を取得できるよう頑張りたい、としている。短大で学んで良かったと思ってもらえることが、来年につながり、コミュニティーカレッジという「新たな地平」が見えてくるのではないかと期待している。
 来年度、目白大学短期大学部では学科・コースの再編が行われ、現・生活福祉コースは介護福祉コースに名称を変更する予定となっている。さらに現在は生活科学科と製菓学科の二学科だが、新たにビジスネ社会学科が設置され三学科となる。



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