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記事2009年10月3日 2149号 (1面) 
なぜ解消できぬ国私間格差
公財政支出 主要国と比較して際立つ高さの国立大学
国・私大間で40倍の開き

 わが国の教育に対する公財政支出は世界の先進国と比べ大きく立ち遅れている。特に高等教育はひときわ深刻で、マスコミでもしばしば取り上げられている。国内総生産(GDP)に占める教育への公財政支出は経済協力開発機構(OECD)加盟国中、最低水準。
 しかしその最低水準の現状を更に細かく見ると、意外な事実が浮かび上がってくる。
 日本私立大学団体連合会は今年七月に『私立大学における教育の質向上〜わが国を支える人材育成のために〜』と題する報告書を公表した。私立大学の教育の質的向上に向けた取り組みや今後の方向性などをまとめたものだが、質の向上と不可分な公財政支出問題も取り上げている。この問題を分担執筆したのは北元喜朗・北陸大学理事長。
 報告書によると、OECD加盟国の学生一人当たりの年間教育費の公財政支出(国民の税金の使われ方)は、平均で八十七万円、米国は百四万円、英国は九十七万円だが、わが国の私立大学はわずか十四万円にすぎない。
 ところがわが国の国立大学に対する公財政支出は主要国と比べてもダントツの百九十七万円にもなるのだ。わが国全体としては五十四万円。国立大学のこうした数字はマスコミでも紹介されることは少ない。
 大学一校当たりの公費(税金)投入額は、国立大学が百四十三億円なのに対して私立大学は三・三億円で、国立大学の約四十分の一。
 九百七十五校、約二百二十四万人の学生を抱える私立大学に投入される公費(税金)は三千二百五十億円。
 それに対して国立大学は八十六校、約六十二万人の学生で一兆二千三百億円にも上る。
 大学別で見ると、東京大学がダントツの一位で、一校に一千三十五億二百万円、学生一人当たりにして年間七百二十六万七千九百円、四年間では約二千九百万円の税金が投入されている。学生一人当たりの投入額(税金)では筑波技術大学がトップで年間約九百三十万円、四年間では約三千七百万円になる。国立大学の医学部となればさらに大きな数字となるのは必至だ。
 報告書はまたこんな数字も紹介している。平成十六年四月に発足した国立大学法人は設立と同時に国有財産であった資産総額九兆円を超える土地、建物等を現物出資という名目で移管された。土地は東京都の総面積の六割に匹敵する約三億九千万坪にも及んだ。
 報告書は、平等に使われるべき国民の税金が、国立大学法人に極めて偏った形で配分されていることを問題視、国立大学法人と私立大学との間にある公財政支出の格差を正当化する議論はもはや成り立たないと指摘、「受益と負担の公平」に向けた速やかな是正を求めている。新政権発足で政府は既存の予算についてゼロベースで厳しく優先順位を見直すことにしているが、高等教育予算、負担の在り方などを抜本的に考える好機とはいえないだろうか。



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