こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2009年10月23日号二ュース >> VIEW

記事2009年10月23日 2151号 (1面) 
私立高等学校等経常費助成費等補助金 前年度比4億円の増額要求
文部科学省が22年度概算要求提出
今後の査定で削減の恐れも
施設・設備補助は減額要求

 文部科学省は十月十五日、財務省に平成二十二年度概算要求を再提出した。それによると、民主党がマニフェストに掲げていた高校の実質無償化、高校奨学金事業等の充実改善を新たに要求。従来からの私立高等学校等経常費助成費等補助金については、前年度比四億円増の一千四十三億円の要求となった。高校無償化実施で私学助成への影響が懸念されたが、概算要求の段階では大きな減額は行われていない。ただし各省庁の概算要求(一般会計)総額は、過去最高の九十五兆円にも達しており、また金額のない「事項要求」の中にはマニフェストで実施を約束した政策(例えば大学奨学金等の充実)もあり、財務省や行政刷新会議等による今後の査定作業では私学助成が削減される恐れもある。私学団体では私学振興全国大会を開くなどして、私学助成の堅持・拡充を政府等に強く求めていく方針。


 概算要求とは、各省庁が来年度の事業実施に必要な予算を財政当局に要求するもの。八月末にはすでに二十二年度概算要求が財務省に提出されていたが、政権が交代、鳩山内閣は、八月末の概算要求を白紙撤回し、各省庁に、大臣、副大臣、大臣政務官主導の形で来年度概算要求を出し直させた。優先順位は、マニフェストで約束した政策の実施が第一。文部科学省の新概算要求では高校の実質無償化を第一に掲げている。具体的には「高等学校等就学支援金」との名目で四千五百一億円、「高校奨学金事業等の充実・改善」として百二十三億円、合わせて四千六百二十四億円を要求している。前者は、国公立高校生世帯に授業料相当額を助成し、実質的に授業料を無料にし、私立高校生等のいる世帯に対しても同等額を助成する。年額十一万八千八百円以内(低所得世帯は二十三万七千六百円以内)。後者は、各都道府県に、従来の奨学金に加え入学時に必要な経費等(入学料、教科書費)を対象とする就学支援策(給付型奨学金等)を付加的に行う資金を交付するもの。対象者は年収三百五十万円以下の世帯の生徒等約四十五万人。
 また私立高等学校等経常費助成費等補助金の増額要求分は、各都道府県が、地域の実情に応じて低所得世帯の私立高校生に授業料減免補助を引き続き行えるよう国庫補助を充実するもの。
 その一方で、私立学校施設・設備の整備については、前年度比八億円減の百九十二億円の要求にとどまった。鳩山政権は元来、箱ものよりは人への投資を重視している。百九十二億円には私立学校施設の耐震化推進や低炭素社会実現に向けた私立学校施設の整備等の事業が盛り込まれている。
 そのほか初等中等教育関係では、新規事業として「高校に通学する離島出身の生徒に対する寄宿舎等居住費」に六億円、「新型インフルエンザ対策の実施」に一億円、「子どものための優れた舞台芸術体験事業」に五十億円(文化庁関係)などを要求している。増額要求しているものとしては、学習指導要領によらないカリキュラム等で先進的な理数教育を実施する「スーパーサイエンスハイスクール支援事業」に前年度比七億円増の二十二億円を要求。「公立学校施設の耐震化等の推進」については、前年度比三十五億円増の一千八十六億円を要求している。
 このほか全国的な学力調査に関しては、全員を対象とする悉皆(しっかい)調査(私立小・中学校は任意参加)を改め、抽出調査(抽出率四〇%)および希望校を対象とする方式にする。要求額は二十一億円減の三十六億円。
 教員免許制度に関しては、教員の養成課程を六年制(修士課程)とすることを含めて抜本的な再検討に着手する。そのために必要な調査費等として三億円を要求している。また抜本的な見直しの方向性が出るまでの間、山間地・離島などへき地学校の教員、少数教科・科目を担当する教員、障害のある教員等に対する大学における教員の現職教育への支援等を行う。そのための予算として四億円を要求している。大学関係では、私立大学等経常費補助金は、前年度四億円増の三千二百二十二億円の要求。医師不足の解消等や経営基盤の強化に取り組む大学等を重点的に支援。事項要求にとどまっている「大学奨学金等の充実」に関しては、無利子奨学金貸与人数の増などについては、年末にかけての予算編成過程で検討するとしているが、藤井財務大臣は事項要求の実現は難しいとの見解も述べている。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞