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記事2009年10月23日 2151号 (2面) 
私立中高校の6割に軽度発達障害児
昭和学院中学高校の浅田教諭が全国調査
関心はあるが支援体制は低調
多かった研修望む声

 学校現場ではLD(学習障害)やADHD(注意欠陥・多動性障害)、高機能自閉症といった軽度発達障害児に対する指導が大きな課題の一つとなっているが、このほど私立中学・高校における軽度発達障害児の在籍状況や学校の支援体制などの実態が明らかになった。浅田聡・昭和学院中学高校教諭が、財団法人日本私学教育研究所の委託研究員として私立中学・高校における軽度発達障害児への支援体制の充実を目的に、平成十九年九月から十月にかけて全私立中学・高校を対象に調査したもの。回収率は中学が三七・一%、高校が三九・八%。調査回答者は管理職五〇%、養護教諭一七%、その他三三%。文部科学省でも私立学校対象の調査は行っておらず、極めて貴重な調査結果。調査結果の概要は次の通り。
 (軽度発達障害児の在籍状況)「在籍している」「疑いの生徒はいる」を合わせると、中学、高校の六〇%で「いる」と回答。在籍数は五人以下との回答が半数。障害名では「アスペルガー症候群」が最多だった。発達障害の事例が全くないと回答した学校もあったが、報告書は「発達障害が分かって回答しているか疑問が残る」としている。
 文部科学省が公立小・中学校を対象に平成十四年度に行った抽出調査結果では六・三%の割合で軽度発達障害児が推計できたが、この調査でも判定は医師ではなく教員らがあたっている。
 (支援体制)特別支援教育に対する関心に関しては、「高い・ある」との回答は中学校で六五%、高校で五三%だったが、具体的支援体制の存在は、中学校で一二%、高校で八%にすぎず、支援体制はまだ低調だ。
 (入学と具体的支援体制)軽度発達障害児に関して中学、高校とも一〇%前後の学校は積極的に入学を認めていたが、六割の学校は消極的だった。特別な支援ができない、他の生徒への影響、学級経営の困難さなどがその理由として挙げられている。学校側に発達障害を持つことを伝える時期に関しては、「願書を出す前に相談してほしい」が七八%、「合格し入学した直後」が一二%など。
 (発達障害の普通学級での支援の難しさ)報告書は、軽度の発達障害ははっきり見えるものではなく、あらゆる場面で起こり得る対人関係のトラブルで、家庭が障害のあることを認めないなど学校と家庭との連携の難しさにも言及している。こうした状況の中で、私立中学・高校では、障害について知るための研修、具体的な対応を知るための研修、専門家を交えた情報交換の場などを望んでおり、そうしたことを可能とするため、「私学でも研修予算」(二八・七%)、「専門職を置く予算」(二六・一%)、「教員の加配予算」(一八・一%)を国等に望む声が多かった。LDは、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力のうち特定のものの習得と使用に困難を示すさまざまな状態で、脳の中枢神経系の何らかの機能障害が疑われている。ADHDは、脳神経的な障害で、集中力がない、教室を歩き回る、順番が待てないなどの症状が現れる。
 アスペルガー症候群は、興味関心やコミュニケーションに特異が見られる知的障害のない発達障害といえる。



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