こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2009年10月13日号二ュース >> VIEW

記事2009年10月13日 2150号 (1面) 
文部科学省、高校無償化で意見交換会
日私中高連 一定の所得制限が必要
22団体が意見発表
高校全入化を懸念する声
 文部科学省は十月九日、川端達夫大臣や鈴木寛副大臣、高井美穂大臣政務官らが出席して、同省内で「『高等学校実質無償化』に関する関係団体との意見交換会」を開催、地方自治体や教育委員会、学校、教職員などの二十二団体が意見発表した。このうちほとんどの団体は高校授業料無償化に賛意を表明、助成金の支給方法については学校が便宜的に受給する間接支給方式が望ましいとした。しかし課題を指摘する意見もあり、日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長は、公立高校の無償化が実現する一方、私立高校に関しては有償部分が残ること、限られた財源の中で、対象者については一定の所得制限を設け、低所得者層により厚い制度とするべきだとの考えを明らかにした。

 この日の意見交換会は、十月十五日の来年度概算要求の再提出期限を前に急きょ開催したもの。同省の基本方針を説明するとともに、来年の通常国会に提出する関連法案の制度設計の参考にと開いたもので、全国知事会、全国都道府県教育委員会連合会、全国高等学校長協会など高校に関係する団体のほか、助成金の対象とされる、専修学校高等課程、高等専門学校の団体なども参加した。
 この中で全国知事会は愛知県の神田真秋知事が、公立高校の実質無償化と私立高校支援を打ち出したことを歓迎、地方自治体の事務負担を軽減する観点からも間接支給方式は望ましいとした。また財源については全額国費とすること、現在行われている私立高校授業料軽減補助が都道府県によって対象や補助額にばらつきがあり、同省の想定する助成の上限額(私立高校で年額二十四万円)を超えて補助している自治体もあることを指摘した上で、現状にかかわらず一律の措置を要請。さらに高校授業料軽減は、既存の経常費助成をきちんと確保した上で行ってほしいと要望した。
 全国市町村会は私立高校生の家計急変家庭について迅速に対応するよう要請、一部市町村が助成している下宿費も助成対象とするよう求めた。
 全国都道府県教育委員会連合会は、高校についても義務教育と同様に授業料の概念そのものを取り払うよう要望。
 日私中高連の吉田会長は、さらに学校の教育環境の整備の必要性や、公私間格差が今まで以上に開かないよう私学助成の一層の拡充を求めた。
 全国高等学校長協会は公立高校の授業料が実質無償化することで、授業料未納問題が解決できる可能性があることを指摘、私立高校への配慮も要請した。
 全国専修学校各種学校総連合会の大竹通夫常任理事(全国高等専修学校協会長)は授業料助成の対象となったことに感謝し、同時に国による私学助成の実現を要請した。
 国公私立の高等専門学校三団体からは、普通科に比べて授業料が約二倍と高い状況への理解や私立高校の場合と同様に低所得者層に関しては、公立高校の倍額の助成金を求める意見が聞かれた。
 日本高等学校教職員組合は高校授業料の無償化によって授業料未納で卒業証書が貰えないといったケースがなくなるなどと述べ、無償化の早期実現を要請。教科書の購入費への助成や奨学金の充実も併せて考えてほしいと要望した。日本教職員組合は、高校無償化の実施に感謝した上で、給付型奨学金と併せ二階建て方式とすること、私学助成の充実等を要望。全日本教職員組合は学校設置者を問わずすべての高校生を対象とすること、私学への配慮を要請した。
 意見発表では私学団体以外からも私立高校への配慮を求める意見が聞かれたほか、高校全入政策に関しては、複数の団体が慎重な検討を求めた。


鈴木副大臣
低所得者層については公私間格差是正したい


 意見交換会には午前中鈴木副大臣らが出席、午後には川端大臣が顔を見せた。
 このうち、午前中、十一団体の意見発表の後、鈴木副大臣が現時点での制度設計の概要を説明したが、高校授業料を実質無償化する助成金の受給権は本来的には保護者等にあるが、事務負担の軽減などから設置者による代理受領の間接方式を取ること、一部の自治体の公立高校の授業料が標準額を相当上回っているため、議論がシンプルに行えない面があること、私立高校に関しては公私間格差の是正は重要な課題で、少なくとも今度の制度で公私間格差の拡大があってはならない、加えて低所得者層については公私間格差を是正する制度にしたい、と語った。また私立高校の無償化については考えていかなければいけないとしながらも、建学の精神の尊重も非常に大事、学費負担軽減の拡充の方向性をさらに検討していきたい、無償化に伴って私学の教育内容が必要以上に制限され、建学の自由が損なわれることがないようにしたい、とも語った。私立高校については授業料軽減を実施する方向は決まっているが、現在の経常費助成費補助金をどうするかについて鈴木副大臣から明確な説明はなかった。
 このほか公立学校の教職員定数については高校無償化と同じプライオリティーで改善に努めること、高校全入実現については、中長期的な課題で、今回の四年間に限ったマニフェストでは高校全入の制度改革を謳っていない、と明言した。また高校を義務教育化する考えは持っていないとした。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞