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記事2009年1月3日 2123号 (2面) 
平成20年度版『今日の私学財政』
日本私立学校振興・共済事業団が公表
大半の法人が収支悪化
校舎等の老朽化も進展
 日本私立学校振興・共済事業団は、昨年十二月二十二日、平成二十年度版「今日の私学財政」を公表した。学校法人の財務状況を平成十九年度中心に過去十数年あるいは数年間の中で現状や推移等をまとめたもの。集計結果の概要については今回から解説を圧縮し、ポイントのみの記載とした点が特徴。ここでは大学法人、短大法人、高校法人、中学校法人、小学校法人ごとに財務状況の概要を報告する。(編集部)
 ■大学法人 平成四年度から十九年度までの十五年間に大学法人は百七十法人増加した。短大法人が大学を設置し大学法人に移行したためなどが原因。一法人当たりでは、十五年間に帰属収入(学生納付金や補助金等)が減額、一方、支出は増加し帰属収支差額(帰属収入から消費支出を引いた額)は減額傾向を続けている。また帰属収入で消費支出を賄えない法人(基本金組み入れなど将来に対する蓄えが取れない)は平成四年度の集計法人の四・八%から増加を続け、十五年後の十九年度には三四・五%まで拡大した。この間、大学法人の一法人当たりの資産は増加、負債は減少するなどしたが、減価償却資産は老朽化が進んでおり、施設の更新等には二の足を踏む傾向だ。
 ■短期大学法人 短大法人は平成四年度の二百六十二法人から十九年度には百三十六法人へと半減した。大学法人に移行したことによるもの。
一法人当たりでは、十五年間に学生数等が二千四百二十六人から一千二百八十五人にほぼ半減し、帰属収入は四年度の二十二億六千三百万円から十九年度には十四億七千七百万円へと六五%程度までに減額している。その一方で消費支出は八七%程度にしか減っていない。そのため収支は悪化傾向をたどり、帰属収入で消費支出を賄えない法人は四年度の四・六%から十九年度には四七・一%まで広がった。負債は減少したが、資産も減少、施設の老朽化も進んだ。
 ■高校法人 平成四年度から十五年間に生徒数が二七%減っていることなどから、一校当たりの帰属収入は十一億八千百万円から十一億一千九百万円に約五%減少、一方、消費支出は九億九千五百万円から十一億九百万円に一一・五%増加している。そのため帰属収支差額は一億八千六百万円から一千百万円へと激減している。基本金組み入れ額も半減し、十九年度の組み入れ額は一億八百万円。帰属収入で消費支出を賄えない高校法人は四年度の集計法人の一二・一%から十九年度には四八・七%に拡大し、五割を超える勢いだ。この十五年間に資産の額は一法人あたりで四十億八千百万円から四十九億五千五百万円へと二一・四%増えているが、増加の大半は有形固定資産で、現預金などの流動資産は減少傾向にある。報告書では収支の悪化による資金の流出が始まっている、と推察している。負債に関しては、高校法人全体として十五年間に一四・一%しか減っていない。施設・設備に対する借入金を返済し、相当額を基本金(第一号)に組み入れる一方で、収支の悪化による新たな借入金が運転資金として発生している可能性が考えられる、と報告書は指摘している。施設・設備の老朽化も進んでいる。
 ■中学校法人 中学校法人数は極めて少なく、収支の状況は厳しい状況。ただし中学校部門(中学校単独で、大学法人等が設置する中学校を含め)では、一校あたり平成十六年度から十九年度までの間に帰属収入の伸びが消費収支の増加を上回るなど健全な状況だ。
 ■小学校法人 平成十六年度から四年間に帰属収入は増えていないが、人件費や経費の削減が行われ、収支は改善している。大学法人の小学校なども加えた小学校部門でも児童数が増え、この四年間、財務状況は健全な状況で推移している。
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