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記事2009年1月3日 2123号 (2面) 
中教審、学士課程教育等で答申
学生本位の教育展開
高大接続テストの研究に期待
 中央教育審議会は昨年十二月二十四日の総会で、塩谷立・文部科学大臣に二つの答申「学士課程教育の構築に向けて」と「高等専門学校教育の充実について―ものづくり技術力の継承・発展とイノべーションの創出を目指して」を提出した(4面に答申概要)。
 このうち学士課程教育に関する答申は、大学の学部段階の教育について、質的な向上や、我が国の大学教育の国際的通用性を高めるなどの観点から、現行の学部や学科といった組織中心ではなく、学位を与える課程(プログラム)中心の教育づくりを提言したもの。「何を教えるか」より、「何ができるようになるか」といった学生本位の教育活動の展開を目指している。
 答申では、各大学の主体的な取り組みの参考となるよう、「大学に期待される取り組み」を数多く列挙、また「国によって行われるべき支援・取り組み」を提言している。
 具体的には、大学は学生の卒業に当たって学位を授与する方針を具体化・明確化し、積極的に公開するとともに、国は学生が二十一世紀型市民として身に付けるべき能力「学士力」の参考指針を示すこと、大学は順次性のある体系的な教育課程を編成、国は分野別のコア・カリキユラム作成を支援すること、学生の学習時間が短く、授業時間外の学修を含めて四十五時間で一単位とする考え方が徹底されていないため、学生の学習時間の実態を把握した上で、単位制度を実質化すること、学生の成績評価が教員の裁量に依存し組織的な取り組みが弱いため、成績評価基準を策定し、GPA等の客観的な評価基準を適用することなどを提案している。
 入学者受け入れに関しては、大学は大学と受験生のマッチングの観点から入学者受け入れ方針を明確化することなどを提言、国に対してはAO入試の実施時期について青田買い批判を受けないよう実施時期のルール化を求めている。また審議途中で大きな関心を呼んだ高校生の学力を客観的に把握するための「高大接続テスト(仮称)」については、一定の意義があるとしつつも、高校教育の在り方との関係上、留意すべき点も種々あることから、高校と大学両関係者間の十分な協議・研究が行われることを期待するなどを提言している。そのほか教員、大学職員への研修の活性化、分野別質保証の枠組み作りのため日本学術会議への審議の依頼等質保証の仕組みの強化などが必要と指摘している。
 一方、高等専門学校に関しては、高い就職率や満足度の高い卒業生など各方面の高い評価を受けているものの、若者の理科への関心の薄れ、平成四年度までは卒業生の八〇%超が就職していた状況から平成十九年度には卒業者の五四%が就職、四二%が進学(大学へ編入学二六・六%、専攻科への進学一五・八%)するなど進路が多様化している、地域との連携強化の必要性が叫ばれているなどから社会経済環境の変化に対応した高専の今後の在り方の検討が必要としている。具体的には、(1)教育内容・方法等の充実(2)入学者の確保及び多様な学生への支援(3)大学への編入学者増加への対応(4)教育基盤の強化(5)教育研究組織の充実(6)高等専門学校の新たな展開(7)社会との関わりの強化――を今後の方向性として提言している。
 このうち教育内容・方法等の充実に関しては、地域の産業界等との幅広い連携の促進、共同教育の充実、自学自習による教育効果も考慮した単位計算方法の活用などを、教育研究組織の充実に関しては、工業・商船以外の新分野への展開、地域のニーズを踏まえた専攻科の整備・充実等を提言している。また高等専門学校の新たな展開に関しては、公立の専門高校や大学校等を基に新たな公立高等専門学校を設置する可能性を含めて潜在的需要を掘り起こし、需要がある場合には支援方策等について検討することなどを求めている。

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