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記事2009年1月23日 2124号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
教育機関としての実質化議論
位置付け不明確などの意見
 【大学分科会大学院部会】
 中央教育審議会大学分科会の大学院部会(部会長=荻上紘一・大学評価学位授与機構教授)は、一月十五日、東京・霞が関の文部科学省において委員懇談会を開催した。今回の懇談会で現在の委員での大学院部会は最終の会議となる。
 論点は「大学院の教育機関としての実質化について」。
 最初に文部科学省の徳永保・高等教育局長が、大学院は、修士課程・博士課程という課程制となり、教育基本法の改正により教育機関として位置づけられた、しかし、実質的にそうなっているのか、検討いただきたい、と述べた。
 委員からは、大学院における教育機能について「(教員の)モチベーションが最大の課題。教育貢献を数量的に測るもの、評価基準が必要だ。教育に特化した人も出てくるような雰囲気の醸成も必要だ」「大学院GPなどを見ると教育専任が生まれている。今、動きつつあると思う」「教育評価については、大学以外の評価を入れることが必要」などの意見が出た。
 定員が決められているため「いろいろ問題が出ている。アメリカのように、入り口管理より出口管理で質を維持するという考え方に変えられないか」との意見もあった。
課程制については、「日本の学部教育は専門制をとっており、大学院の専門との違いが明確でなく、カリキュラムを作れと言っても無理ではないか。また、修士課程と博士課程の前期、専門職大学院との違いもはっきりしない。他大学卒業者が多く入ってくると多様なバックグラウンドを持つため教育に手間とお金がかかる、これをどうするか」との意見に対して、「アメリカの場合、教育課程が充実しコース分けがきちんとしており、全員が共通で学ぶ部分がある」「学位課程に基づくプログラムなので、短大―大学―大学院と、学位が連続してつながっていくという考え方を取り入れていかないといけない」などの提案があった。
 このほか、学生の進学目的を知ったうえで大学院の位置づけを明確にしなくてはいけない、職業人養成と研究者養成を分ける必要があるのではないか、学位論文による学位取得だけでなく質の保証をするプロセスも必要だ、医学系については論博(論文での博士学位取得)を一考していただきたい、教員の負担を軽減する方策が必要だ、などの意見が出た。
 また、大学院の学生に対する評価について、「専門性は高いが創造性や課題設定能力などがないという結果が出ており、研究者に創造性がないのは問題だろう。スタンフォード大では学生にデザインを学ばせている。何を育てるのかという議論が必要だ」という委員もいた。
 最後に荻上部会長は、次期の部会でも引き続き議論をお願いしたい、などと述べた。
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